自衛隊官舎のボロすぎる実態、腐った床・コバエ発生する風呂…【写真付】腐った床を粘着テープで補修している

自衛隊員になっても
官舎に住めるのは一部

 今年は、国防の歴史的な転換点となる。政府は昨年12月に閣議決定した防衛力整備計画で、今後5年間の防衛費を43兆円とした。この予算は、日本に足りなかった反撃能力や装備・弾薬の確保等、防衛能力の強化に充てられる。

 これまで日本は数十年にわたり防衛費を抑制し続けてきたため、装備・弾薬の不足、施設・官舎の老朽化等が深刻な問題となっていた。特に官舎の老朽化は隊員が離職する大きな要因の一つだ。自衛隊員の生活改善を考える議員連盟ができるなどの動きもあり、少しずつだが、老朽化した官舎は減りつつある。このまま建て替え修理に向かってほしいが、財務省の思惑は真逆だ。

 財務省理財局は2011年12月に公表した国家公務員宿舎の削減計画により、国家公務員約58.9万人に対して約16.3万戸まで官舎を削減している。

 自衛隊員だけでも約24.7万人いるのに官舎の数は減っているのが現状だ。この削減により、限られたごく一部の隊員しか官舎に住めなくなった。自衛隊員になれば衣食住が無料という言葉(すでに入隊広報からは消えた)は真っ赤なうそと言わざるを得ない。

 また、居住困難なまでに老朽化した官舎は入居希望者数がほとんどいないため、さらに官舎の整理が進む。

 官舎が減ることで、多くの自衛隊員が経済的な負担も強いられることになる。自衛隊幹部は1~2年に一度の頻度で異動がある。そのたびに官舎に入居できなければ、敷金・礼金を自腹で支払って賃貸住宅に引っ越しするしかない。さらに、住宅手当の上限は2万8000円にすぎず、大赤字となる。

 経済的負担の増加は家計を圧迫し、さらに家族の進学、入院治療、介護などの負担も重なれば生活が脅かされる。一部の高級幹部は緊急参集要員として無料の官舎で生活できるが、その数はわずかだ。官舎の廃止や削減は、多くの自衛隊員に離職のきっかけとなっている。

 今回は、老朽化した官舎の実態について、写真とともに紹介したい。