「定年後は働けない」は思い込み

「老人になったら働けない」サラリーマンの人はそう思い込んでいます。だから働けるうちに貯金しておこうという発想になるのでしょう。そんな皆さんに私はこうアドバイスしたいのです。「貯金も株式もいいですが、それより定年後も働いたらいかがですか?」

 いまや「老人は定年後に働けない」というのは思い込みにすぎません。サービス業では年齢に関係なく働ける環境が整っています。コロナ禍で一般化したリモートワークの広がりも、またとない追い風になりました。

 サラリーマン時代に副業によって練習しつつ、定年後にフリーランスになる人が少しずつ増えています。定年世代の50~60代がゼロから「起業」を目指すのは少々無謀ですが、「定年後フリーランス」であれば実現可能性が高いです。

「定年後に働く」といっても現役時代と同じだけ稼ぐ必要はありません。子育てが一段落つき、ある程度の蓄えがあり、退職金・年金が期待できる方であれば「月に数万円」稼ぐことができれば十分なはず。

 定年後は雇われずに、好きな仕事をして小さく稼ぐ。そんな高齢化社会に対応した生き方を「令和フリーランス」と名付けましょう。令和フリーランスになるためには、サラリーマン時代とはまったくちがった学びが必要です。それは従来の「社内で出世するスキル」や「転職できるスキル」とはまったくちがった「長く働くためのスキル」。出世・転職スキルはいずれも「雇われる」スキルなので定年によって終わりがきます。しかし「雇われない」フリーランス・スキルには終わりがありません。自分次第でいつまでも働けます。

 最近、多くの会社がSDGs(持続可能な開発目標)を意識しています。しかし皮肉なことに、その会社に勤める社員の労働がもっとも持続可能でない状況です。おそらくこれから日本企業は老後まで社員の面倒をみるのではなく、「独り立ちを支援する」方向へ舵を取るものと思われます。それは「避けられない変化」です。

 ならばサラリーマンからフリーランスへ変身して、時代の先駆者になろうではありませんか。そのための発想の転換・行動をできるだけ早く始めましょう。雇われず働けるようになれば金銭不安が少なくなるし、精神的にもすごく楽です。

 仕事人間として生きてきたサラリーマンのなかには、定年と同時にやることがなくなり抜け殻になってしまう人がいます。毎日忙しく働いていた「部長」が、ヒマをもてあます「ただの人」になってしまうと一気に老けてしまいます。「会社人間100%」で生きてしまうと、それを失ったときの喪失感や無力感があまりにも大きい。これは「貯金」を用意するだけでは解決不能な問題です。

「ただの人」への転落危険度チェック(『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』P.11より転載)「ただの人」への転落危険度チェック(『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』P.11より転載) 拡大画像表示