「実は私たちは10年前からさまざまな形で“省エネ”に取り組んできていたのです。実際、生産量は10年で3倍に増加しましたが、CO2や電気の排出量はマイナス10%という非常に高い目標を達成してきました。そういう取り組みを着々と積み上げてきたことに加えて、CO2排出量をオフセットしたカーボンニュートラルの都市ガスを用いることができたのが大きかった」(安福社長)
それは、天然ガスの採掘、輸送、製造、燃焼のそれぞれの工程で発生するCO2をクレジット(排出権)で相殺した都市ガスのことだ。最大のメリットは、導入の際に新たな設備投資を必要とせず、既存設備のままでCO2削減ができるという点だ。神戸酒心館の場合、大阪ガスが提供している「カーボンニュートラルな都市ガス」というサービスを利用しているという。
「2050年のカーボンニュートラル実現」を目指しているDaigasグループ(旧大阪ガスグループ)では今、SDGs推進の観点からも、1社でも多くの企業にこのサービスを利用してもらいたいと積極的に提案をしている。同社の担当者によれば、昨年11月末の段階で71社が利用しているという。業種はさまざまだが、どちらかというと大企業の方が多いという。
「一般の企業から学校法人、スーパー温泉など幅広くご利用いただいています。ただ、神戸酒心館さんのお酒のように、カーボンニュートラルな都市ガスを使って製造された商品が販売され実際に一般の消費者の下に届いて、しかもそれが海外にまで注目されるというケースはまだそんなにありません」(大阪ガス担当者)
中小企業こそカーボンゼロに
取り組む時代がすぐそこまで?
そんな先進的な事例だからこそ、「カーボンゼロ日本酒」には大きなポテンシャルを感じる。例えば、この酒が国内外に注目されれば、「中小企業こそ日本を飛び出して戦うべき」という機運が高まるかもしれない。
ドリンク業界における環境問題への先導的な役割を果たしている企業を表彰する世界最大のプログラム「THE DRINKS BUSINESS GREEN AWARDS」で、神戸酒心館は日本酒の酒蔵として初めて受賞を果たしている。