キリンホールディングス(HD)の磯崎功典社長は、2015年3月の就任から7年を超えた。過去のキリンHD社長の在任期間は5年程度が慣例で、業界内では「いつ代わってもおかしくない」とささやかれる。それでも、磯崎社長体制はしばらく続き「超長期政権」となるだろう。その理由はなぜか。キリンHD社長人事の内幕を追った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
キリンHD磯崎社長の長期政権
在任期間は異例の7年超え
「5年の慣例」超えの長期政権。それでも、“超長期政権”となり現体制は維持される――。
キリンホールディングス(HD)の磯崎功典社長は、2015年3月にトップに就任し、在任期間は7年を超えている。下図を見れば、異例さがうかがえる。
01年以降、キリンHDの社長の任期は5年以内だ。これが近年の任期の上限であり「慣例」だった。
キリンHDは厳格な規律を重んじる「三菱財閥」の一員だ。三菱財閥を構成する企業は、トップの任期を順守することで知られる。例えば総合商社の三菱商事の社長任期は6年、メガバンクの三菱UFJ銀行は4年が慣例だ。慣例破りの長期政権は、三菱財閥の中でも珍しい。
また、ビール業界全体を見渡しても、7年を超える任期はあまり見られない。佐治家と鳥井家のファミリー企業であるサントリーHDを除き、アサヒグループHD、サッポロHD共に01年以降の最長は6年。7年を超えたケースはなく、業界内では「キリンHDの社長は、いつ交代してもおかしくない」とささやかれている。
それでも、キリンHDの次期社長レースの現在地も踏まえると、磯崎社長が8年を超える“超長期政権”となるだろう。あるキリンHD幹部も「慣例で社長任期を区切ると、社長の求心力を低下させてしまう」と語り、超長期政権への可能性を容認する。
次ページ以降では、ポスト磯崎の次期社長レースの行方と共に、磯崎社長が「超長期政権」となる理由を明かす。