C社長は就業規則をパラパラとめくり、普通解雇の規定を確認した。

「普通解雇の該当項目の中に、『事業の縮小又は休廃止その他事業の運営上やむを得ないと認めたとき』とあります。会社はこの先、乙社の倒産により売上が大幅に低下する可能性があります。その場合事業の運営上やむを得ないとして、A君の再雇用を拒否できますか?」
「今の話ですと、Aさんが整理解雇の対象に該当するかどうかで、再雇用を拒否できるかできないかを判断します」

<整理解雇とは>
(1)企業が経営悪化や事業縮小などの理由により、人員削減のために行う解雇のことで、一般的には「リストラ」と呼ばれる
(2)整理解雇の4つの要素
 企業が労働者を整理解雇する場合、以下の要素を全部満たす必要がある
〇 経営状況が、整理解雇が必要なほど低下していることを、具体的な経営指標や数値などの客観的資料を従業員に提示し説明できるか。将来の予測だけでは人員整理はできない。
 〇 人員整理を回避するために、さまざまな方法で手を尽くしたか
  (諸経費の削減、新規採用の停止など)
 〇 解雇する従業員は客観的に選定しているか
 〇 整理解雇の必要性などについて、事前に従業員への十分な説明をしたか


 参考:厚生労働省 労働契約の終了に関するルール 

「甲社の場合、売上が下がるのはこれからだし、それによって実際に経営が圧迫されるかどうかも未定。もしかしたら新規の取引先ができるかもしれません。だから今の状態では整理解雇する理由がなく、Aさんの再雇用を拒否することはできないでしょう」
「分かりました。しかし管理課の人員は足りているので、もうAさんの居場所がないんです。どうしたらいいでしょうか?」
「再雇用の場合、就業規則で定めていない限り、必ずしも従前の職場に配属する必要はありません。会社が、これまでと違う職場や業務を提示することも可能です」

 D社労士のアドバイスを基に、Aの新たな職場を模索したC社長は1週間後にある決断をした。そしてB部長に決定事項を伝え、再びAと面談するように言った。