日本以外の国では
SDGsよりESGが検索される理由

 下表の集計結果は、検索数最多国の検索数を100として、2位以下を指数化したものだ。SDGsについて日本は世界最多の検索数であり、2位以下を大きく引き離している。主要先進国は、SDGsの検索数ランキングで上位に入っていない。

 一方、ESGやD&Iでは先進国がランクインしている。日本を除くOECD加盟国数は、ESGが10カ国、D&Iが9カ国だ。

        【図表】Googleトレンドでの検索数ランキング(過去5年累計)

日本企業が真に目指すべき「実践的なESG」とは

 このカラクリは、SDGsの出自にある。SDGsは国連で採決されたものであり、その前身は「ミレニアム開発目標(MDGs)」だ。MDGsは「極度の貧困と飢餓の撲滅」「幼児死亡率削減」「HIV・マラリア等の蔓延防止」など8つの途上国向けのゴール項目を設定したものである。

 MDGsの後任であるSDGsはその出自の影響を大きく受けており、途上国向けのゴール設定と読めるものも含まれたままである。欧米では、国連主導のこの動きから降りている国が少なくない。

 日本でSDGsが盛り上がること自体、悪いことではない。しかし、日本でのSDGsの議論を主要先進国を相手に行っても、先方の困惑を惹起してしまう可能性がある。主要国では、SDGsがサステナビリティの議論の中心ではないことは認識しておくべきであろう。

 なぜ、主要先進国ではESGが主流なのだろうか。それは、SDGsと異なり、ESGがプラグマティック(実利的)であり、ビジネスとの親和性が高いからではなかろうか。国連主導で、ビジネスと無関係な目標が少なくないSDGsは、ビジネス機会につながりにくい。

 社会の持続性(サステナビリティ)についての議論は、日本ではある種の社会運動に転化している傾向が見られる。道徳性や規範性とリンクさせることで、サステナビリティがビジネスや実利と二項対立と捉えられている可能性もある。