米中関係の改善に
水を差した「気球問題」

 習近平総書記にとって誤算だったのは、「気象分析などに使う民間の『気球』」(中国側の発表)が、2月4日、サウスカロライナ州沖でアメリカ軍のF22ステルス戦闘機に撃墜されたことだ。

 気球は、アラスカからカナダ領空を通ってアイダホ州に入り、2月1日にはモンタナ州で目撃された。そのモンタナ州にはアメリカ空軍の基地があり、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射施設が点在している。アメリカ側が「これは偵察気球だ」と判断し撃墜したのは当然の措置といえる。

 中国側は、「『気球』はあくまで科学研究に使うためのもので、西風の影響で予定のコースから大きく外れた」と主張し、撃墜にも「過剰反応だ」と強く反発した。

 しかし、アメリカ本土の上空を飛ぶというのは、いかなる理由があろうと主権侵害に当たる。

 日本でも同様の物体が2020年6月と2021年9月に目撃されている。「気球」の実態は、回収した残骸の調査で明らかにされるが、今回は、アメリカ空軍基地の情報を収集する目的、もっと言えば、アメリカ側が「気球」をどの程度の速さで探知し、どう反応するかを試すためのものであったと考えるのが自然だろう。