日中外相電話会談の報道発表では
日本側が語った内容しか発表されず
一方、岸田首相にも誤算はある。もちろん、長男・翔太郎秘書官の首相外遊時における買い物問題で野党の執拗(しつよう)な口撃を余儀なくされていること、そして、性的少数者を巡り「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと発言した荒井勝喜前秘書官を更迭するに至った一件は大誤算だったはずだ。
筆者は2014年のロシア・ソチ五輪を思い出す。このときは、プーチン大統領が「同性愛宣伝禁止法」という差別的な法律を制定したため、欧米諸国が開会式をボイコットする事態に至っている。こんな妄言を看過すれば、広島でのG7サミットでも同じ轍を踏みかねない。
同じ妄言で言えば、前述した秦剛外相が2月2日、林芳正外相と行った電話会談の中身も想像を超えるひどい内容だったのではないかと筆者は見る。
外務省の報道発表では、
「林大臣から、我が国周辺での軍事的活動の活発化、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を改めて表明するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性につき述べました」
など、林外相が何を語ったかしか発表されていない。
報道発表は外務省のホームページでも見ることができるが、
「両外相は、引き続き首脳・外相レベルを含めあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくことで一致しました」
という収まりのいい一文で結ばれているだけだ。
これを読めば、林大臣が日本の立場を毅然と表明し、日中関係の改善に向けコンセンサスが得られたかのように見えるが、実際は少し違う。