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萩原栄幸の情報セキュリティよもやま話

「監視カメラ・防犯カメラ」の運用方法は
十分な議論がされているのか

萩原栄幸 [日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事]
【第2回】 2013年2月8日
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 イギリスと日本の違いを列記すると概ね次のようになる。

(1)日本では監視カメラの設置基準がないに等しい。

 だから個人でも結構監視カメラを家の内外に向けて設置している。だが外国の一部では明確に禁じている。警察の「街灯防犯カメラ」はある基準で設置されているはずと思うのだが前述の通り昨年3月末時点で791台しかないので、ほとんど全体(推定350万台)に影響しないレベルである。

(2)カメラを通じての監視体制が全く違う。

 日本の場合は街灯防犯カメラを除けばそのほとんどが単発でしかも監視についての情報公開は全くない。イギリスは監視センターがあり(1か所のセンターで数十台から数百台もの監視カメラを集中管理している)これを警察と民間の警備会社が共同で運営している(とはいっても大部分の実作業は民間の警備会社で、警察とは専用回線で繋がっているケースが多いという)。そして容疑者の顔認証システムを作動させており、80%の一致で警察が動くシステムをとっている。

 ここまではよく管理されているという印象があるが、実際には、監視人(警備会社の警備員)によるカメラ映像の濫用も発覚している。例えばウェールズ地方では悪質な監視人がお気に入りの女性を監視カメラでしつこく追いかけ、公衆電話の前に来た際にその公衆電話に電話をかけるなどのストーカー行為で逮捕された事件が実際に発生している。また、覗き見の映像や売春婦の画像などを個人的にコレクションしたり売買したりする行為も発覚している。

 また議論を呼んでいるのが「風紀を乱すもの」の扱いだ。ホームレスや些細な悪事(資源回収ゴミ箱に別のゴミを入れたりする行為)について、「法律違反というほどではないが、一般の市民からすると遠慮したい人(ホームレスなど)の排斥やちょい悪行為(ゴミのポイ捨てなど)で、近所に通知するのはどこまで許容できるのか?」といった議論がされている。

 いずれにせよ弊害はあるが、一応は組織的に管理されているイギリスに対して、全くの野放し状態に等しい日本との差は大きい。

(3)さらに大きな違いがその画像が活用されるタイミングである。

 前述の通り、イギリスでは顔認証や骨格認証技術を用い、容疑者と一致するケースには、警察が動き新たな犯罪が発生する前の予防策としても活用している。日本にはそういう発想はなかった(後述するが、現在一部のカメラで試行中ではある)。通常は事件後に被疑者を特定するために活用している例がほとんどである。この差は大きい。結果として次の違いにもつながっている。

(4)イギリスなどの諸外国では一部の国を除き「ここに監視カメラがあります! 注意してくださいね!」ということが表示されており、このことに一定の犯罪抑止効果があると考えられるが、日本では一部を除き積極的に知らせていない。街には多数の監視カメラが実際に設置されているが、その多くは「ここに監視カメラがあります」という表示がほとんどない。

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萩原栄幸
[日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事]

(はぎわら えいこう)2008年6月まで三菱東京UFJ銀行にて先端技術の調査研究を職務とし、実験室「テクノ巣」の責任者として学会や金融機関を中心にセミナーやコンサルを行なう。現在は日本セキュリティ・マネジメント学会の常任理事であり学会の「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」で主査も兼務している。
防衛省、県警本部、県庁、市役所などの講演やコンサルも多数の実績を持ち、特に「内部犯罪防止」「情報漏洩対策」「サイバー攻撃対処」では第一人者であり一般的な「コンプライアンス」「情報セキュリティ」などにおいても平易に指導することで有名。

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クラウド、ソーシャル、モバイル、ビッグデータなど、経営環境をめぐる新たな技術革新が進展するにつれ、企業が対応しなければいけないセキュリティリスクも拡大を続けている。脅威から情報を守るために、ビジネスパーソンがおさえておくべきスキルや、組織におけるマネジメントが関心を持つべき新たな課題まで、「コンプライアンス」「情報セキュリティ」の第一人者が、やわらかく解説する。

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