認知症治療の現場で、不動の人気を誇るエーザイのアリセプト。しかし、この人気薬が一部で危険視され「休薬しよう」と医師や施設の職員に勧められることがあるという。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#22では、認知症治療における人気薬の効果と限界、そして新たに登場した特効薬候補の展望を解説する。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
「アリセプトは危険」
ネットにあふれるネガティブ情報
80代の母が介護施設にいる平沼泰文さん(仮名・50代男性)は、ある日施設の職員からこう切り出された。
「アリセプトをやめませんか」
母は認知症を患っており、夜中に大声を出したり、急に怒りだしたりするという。「アリセプト」(一般名:ドネペジル塩酸塩)は認知症の薬としてかかりつけの医師から処方されていた。施設の職員は、この薬の副作用で衝動性が高まり、母が問題行動を起こす要因になっているのではないかというのだ。
そこで平沼さんがインターネットでアリセプトについて調べてみると、危険性を唱える記事や、母と同様に問題行動が増えたという家族のエピソードにあふれている。
アリセプトは現在、抗認知症薬として効果が認められている4剤の中で、最も医師に選ばれている薬だ。それがなぜ「危ない薬」のレッテルを貼られてしまったのか。