『情報メディア白書』(電通総研編 小社刊)は1994年から毎年刊行しているデータブック。新聞・出版から広告、携帯電話、通信販売業まで情報メディア全般にかかる14の産業を統計データを元に精緻に分析し、メディア関係者やマーケターの戦略立案を支えてきた。2月に発売した2013年版から、内容の一部をダイジェストで紹介する。第2回目の今回は音楽業界を展望する。

 2012年10月1日に改正著作権法が施行された。今回の改正では、市販のCDや音楽配信等で「有償で公衆に提供された」音楽や映像がインターネット上に不正にアップロードされた際に、違法と知りながらそれらのファイルをダウンロード(録音・録画)することが刑罰の対象となった。

 さらに、個人的な目的でも、コピー防止機能がついているソフトをパソコンなどに取り込むことも違法とされ、コピー防止機能を解除するプログラム等を作成・譲渡した場合なども刑罰の対象となった。 日本の音楽業界は、違法ダウンロード規制の結果として「着うたフル」や「iTunes」などを経由した有料ダウンロードの増加を想定している。しかし、楽曲単位のダウンロードは、海外の配信市場では主流ではなくなりつつある。代わって登場したのはデータを端末に取り込まないストリーミング形式のサービスである。

 欧米で現在人気を博している「Spotify」は、1800万曲以上(2012年10月現在)の楽曲が聴き放題となるサービスである。2007年にスウェーデンで起業されたこのサービスは、わずか数年でヨーロッパからアメリカへ市場を拡大させた。2012年10月現在、アメリカ、オセアニア、ヨーロッパの15ヵ国でサービスを提供し、1500万人のアクティブユーザーを獲得している。有料会員の比率が20%以上と高いことも特徴だ。

 アメリカではインターネットラジオの「Pandora」が多数のユーザーを獲得している。これはユーザーの好みに応じて楽曲を連続再生する形式である。2012年10月現在で、アクティブリスナーは5920万、アメリカのラジオリスナーにおけるシェアは6.55%と存在感を示している。

 SpotifyもPandoraも、楽曲の再生回数に応じて権利者にロイヤリティ、広告収入と有料会員費も配分される仕組みとなっている。新たな収益源となりうるこれらのサービスに、欧米のメジャーレーベルをはじめとした主要な音楽レーベルは次々と楽曲を提供するに至っている(なお両サービスとも、有料会員向けのダウンロードサービスは提供している)。