インフレ&金利上昇到来! 騙されないための投資術#12Photo:PIXTA

JT、丸井グループ、マルハニチロにオリックス。個人投資家に人気の株主優待が続々と廃止されている。実は、優待廃止企業数は現在、リーマンショック以来の高水準なのだ。特集『インフレ&金利上昇到来!騙されないための投資術』(全22回)の#12では、優待を廃止しやすそうな企業と、それに伴う株価下落リスクの高い企業を見抜く意外なポイントを、すご腕投資家たちが解説する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

株主優待拡大の傾向は一転
優待廃止後は株価下落リスクも

 株式投資の魅力は、単にお金を増やすことだけではない。食事券にカタログギフト、キャッシュバックの優待カードに日用品の詰め合わせ……。眺めるだけでも楽しい株主優待は、個人投資家から長年にわたり愛されてきた。

 実際、全上場企業に占める株主優待の実施率は、1990年代の10%台から、2019年には40%近くに達している。その背景について、大和総研金融調査部研究員の瀬戸佑基氏は「優待の導入によって個人の株主が増え、上場維持基準を満たしやすくする。また、株価へのプラスの効果も狙った企業が多かった」と話す。

 株主優待という“餌”で持ちつ持たれつの関係を築いてきた企業と投資家。風向きが変わったのは20年だ。下図のように、優待を廃止した企業の数は顕著で、08年~09年のリーマンショック以来の水準にまで悪化している。

 なぜ優待廃止に踏み切る企業が相次いでいるのか。きっかけの一つは、東京証券取引所の再編による上場基準の変更だ。

 本特集#5『株主優待で人気の20銘柄をスゴ腕投資家が徹底レビュー!人気の裏に業績悪化はないか?』で人気優待株をレビューしてもらった有名個人投資家のまつのすけ氏は「上場維持に必要な株主数が2200人以上から800人以上に大きく下がったことで、それまで上場維持が優待導入の目的だった企業にとっては、一つのきっかけになった」と指摘する。

 一方、優待を廃止すれば株価の下落リスクも免れない。冒頭の瀬戸氏と大和総研金融調査部研究員の森駿介氏が1月18日に公表したレポートによれば、優待廃止と同時に増配できなかった企業は、廃止後に平均で5~6%の株価下押し効果となる。

 さらに森氏は「優待の導入は株主数や企業の時価総額に長期的に効果を発揮する一方、廃止後も負の効果が同じように持続する。長期的に見ても株価が戻らないのが全体で見た傾向だ」と指摘。

 優待廃止と、それに伴う株価下落リスクを回避する方策はあるのか。実は、「優待をやめる可能性の高い企業」と「優待の廃止後に株価が下がりやすい企業」のそれぞれに、ある意外な共通点があるのだ。ここからは、やってはいけない「優待株の選び方」を開陳しよう。