インフレ&金利上昇到来! 騙されないための投資術#20Photo by Masato Kato

個人投資家に人気の「ひふみ投信」シリーズを運用するレオス・キャピタルワークスの藤野英人代表取締役会長兼社長を直撃。本特集#11『ひふみ、さわかみ…投資信託の成績ランキングで分かった有名投信「本当の実力」』でも解説したように、難局の続いた最近は、運用に苦戦したアクティブ投信も少なくない。そこで特集『インフレ&金利上昇到来!騙されないための投資術』(全22回)の#20では、レオス率いる藤野氏が今年からファンドマネージャーに復帰した理由、現下の運用戦略や、壮大な野望に至るまでを語り尽くしてもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

「引っ越し」と「ChatGPT」から考えた
深くて意外な相場環境分析とは?

──1月からひふみ投信のマザーファンドのファンドマネージャーに復帰しました。

 2021年後半~22年は、ひふみ投信の運用チームにとって苦手な相場環境だったと思います。それまでは低金利の中、僕らが得意とする成長株が上昇していました。一方、インフレ懸念とともに、米国の金利上昇で成長株が大きく調整しました。

 当社のファンドも対応はしたものの、もともと成長株投資をうたっていることもあり、市場環境の変化に負けてしまったところがあります。

 22年4月にシニア・アナリストだった佐々木(靖人氏)にファンドマネージャーを交代した際、私自身はCIO(最高投資責任者)として、現場から離れて会社経営の方に専念しようと考えていました。ただバトンタッチしたものの、市場環境が良くなくて、下落相場だった中で焦りもあった。どちらかというと回転の速い運用になり、結果的に上位銘柄の名前が常に変化するみたいなことが投資家の不安をあおってしまった。

 成績が出なくて投資家からのバッシングも大きくなり、ある意味、最悪の環境でバトンを渡してしまいました。そこでもう一度僕が操縦席に着き、彼には助手席に着いてもらい、さまざまな批判や叱咤激励も全て、自分が受ける形にしました。

──このところの市場環境をどう見ていますか。

 余談のようですが私はつい最近、元の家の近くへ引っ越しました。聞くと引っ越し業者は空前の人手不足だというんですね。なぜなら今って、コロナ禍で入出国できなかった、人事異動すべき人たちの辞令で官民とも一斉に転勤ラッシュが起きている。(トラック運転手の残業規制が強化される)「2024年問題」といわれていますが、人の手当てが厳しくなるので、人材の取り合いになっている半面、需要も豊富です。

 一方、最近はやりの(米オープンAI開発のチャットボット)「ChatGPT」は、私も夢中になって使っていますが、あれは本当に答えのクオリティーがすごい。投資についてもたくさん聞いたし、恐竜や科学に至るまでいろいろ聞いてみました。

 これら二つの出来事から思ったのは…

次ページでは、「引っ越し」と「ChatGPT」の体験から藤野氏が考えた、深くて意外な相場環境分析を明らかに。その上で、現下の運用戦略や、2月から本格的に銘柄入れ替えを始めたというファンドマネージャー復帰後の進捗、壮大な野望までを語り尽くしてもらった。