インフレ&金利上昇到来! 騙されないための投資術#14Photo:PIXTA

企業の人手不足感が、コロナ禍前の水準に回復した。業種別に見ると、転職求人倍率が時に10倍を超えるなど、極端な人手不足状態が続いている。業容が多岐にわたる人材業界の中で勝ち抜ける企業はどこか。特集『インフレ&金利上昇到来!騙されないための投資術』(全22回)の#14では、市場環境に適合し独自のビジネスモデルを持つ企業を、人材業界のアナリストと共に徹底分析する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

人手不足はコロナ前の水準へ
企業は人材獲得の確実性を重視

 人材業界に今、空前の追い風が吹いている。

 人材業界の動向を見通す上で最も重要なのは、企業の人手不足感だ。その指標として参考になるのが雇用人員判断DIである。

【用語解説】雇用人員判断DI
 日本銀行が全国約1万社を対象に四半期ごとに実施する短観(全国企業短期経済観測調査)の一つで、雇用人員の過不足を指数化したもの。人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いて算出する。マイナスであれば人手が不足していると判断できる。

 コロナ禍前の2019年12月は、雇用人員判断DIはマイナス31と大幅な人手不足だった。ところが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、20年6月には一気にマイナス6まで上昇。その後再び人手不足が進み、直近の22年12月はマイナス31と、再びコロナ前の水準に戻っている。

 さらに、「今後も人口減少による労働力不足は進む」と話すのは、立花証券企業調査部の入沢健アナリストだ。長い目で見ても、人材業界の視界は良好なのだ。

 ただし、人手不足が業界内全域にプラスかといえば必ずしもそうではない。人材業界の業態は多様で、求人情報をウェブメディア等に掲載して求職者を集める「求人広告」、人材を顧客企業に派遣する「人材派遣」、企業に合った求職者を紹介・あっせんする「人材紹介」などに区分される。

 入沢氏は「人手不足が加速すると、求職者は複数の企業から転職先を選べるようになる。今は広告を出しても応募が集まらない状況で、求人広告が効果を発揮できる局面は過ぎたのではないか」と指摘する。

 では、人手不足の恩恵を受けるのはどこか。「求職者が集まらなければ、企業は人材獲得の確実性を重視するので、人材紹介や人材派遣を使うニーズが強まっている」(入沢氏)。

 次ページでは、コンサルタントを介さない人材紹介企業のアトラエと、技術者派遣で売り上げを伸ばすオープンアップグループを紹介する。アナリストと社長への直撃取材を通じて、市場環境とビジネスモデルをうまく組み合わせた独自の手法が人材業界をリードするポイントであることが判明した。