インフレ&金利上昇到来! 騙されないための投資術#22Photo:lemono/gettyimages

「賃上げ」が注目されているが、株式市場においても平均年収が高い企業の株価が堅調だ。人手不足は深刻であり、今後も人的資本がテーマとなる可能性は高い。ただし投資家目線では「給料が高い」だけでは不十分なのも事実。特集『インフレ&金利上昇到来!騙されないための投資術』(全22回)の最終回では、クオンツ分析の第一人者である吉野貴晶氏による、高年収プラスアルファの投資アイデアを紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

平均年収が高い銘柄の株価が堅調だが
精度向上には掛け合わせが重要

 ファーストリテイリングやメガバンク各社が新入社員の初任給を大幅に賃上げするなど、人材獲得競争が激化している。日本にもインフレ時代が到来したこともあり、政府も賃金引き上げを中心とする「人的資本の蓄積」を政策面で後押しする。

 実は株式投資においても「平均年収」は重要な情報になる。

 クオンツ分析の第一人者であるニッセイアセットマネジメント投資工学開発センター長の吉野貴晶氏によると、2018年以降、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄で平均年間給与が上位3分の1の企業と下位3分の1の企業を比較すると、平均年収が高い企業の株価が堅調に推移していることが分かった。業種により年収水準が異なるため、各業種別の上位、下位に分類して比較すると、さらに格差が拡大する。

「近年、企業のサスティナビリティが重視されていることも、平均年間給与の高い銘柄のリターンが堅調な理由でしょう」(吉野氏)

 深刻な人手不足を考えると、今後も平均年収が高い企業に人材が集中するとみられ、この流れは当面は続く可能性が高い。利益をたくさん出しても給料が上がらなければ、ライバル企業への人材流出や仕事への意欲減退のリスクも上昇する。

 ただし、平均年収が高いだけでは不十分なことも事実だ。実際、14年から17年にかけては平均年間給与の銘柄選択効果が見られなかった。

 では、どうすればさらに精度を高められるのか。重要なのは短期、長期の両方の視点からの株主価値の向上である。

 次ページでは吉野氏が作成した平均年収など三つの指標を掛け合わせたデータを公開するが、驚くほど株価のパフォーマンスが改善する効果があった。また、編集部が作成した三つの条件をクリアした銘柄リストも発表する。