インフレ&金利上昇到来! 騙されないための投資術#9Photo:PIXTA

異次元緩和により超低金利が続いた日本。異常な金利環境で、証券マンは同じ口で正反対の“危ない”商品を提案する。高齢の顧客には一見確実にリターンが取れそうな国内債券型の投資信託を勧め、片や海外の高い金利に目がくらむ顧客には、リスクの高い新興国債券を勧めることも。特集『インフレ&金利上昇到来!騙されないための投資術』(全22回)の#9では、日本、米国、新興国の債券商品のパフォーマンスを比較し、現場の声や投資のプロの解説と併せてだまされないためのポイントをお届けする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

「債券なら安全」は幻想
債券投資は国内外に落とし穴

「証券会社は、75歳以上の顧客に対して投資信託を積極的に提案できない。ただし、債券の投資信託であれば話は別だ」

 ある大手証券会社の営業マンは、ご高齢の“お客さま”にも投資信託を販売するこつをこう話す。

 現場の営業にとって扱いが難しいのは、投資信託を売りたくてもガイドラインでがんじがらめの高齢者である。そこで手っ取り早く販売できるのが、日本の国債が多くを占める国内債券型の投資信託だ。低リスクのため上司の同伴が必要なく、円債の安心感も相まって売りやすいのだという。

 ただし、冒頭の営業マンは「国債を大量に詰め込んだ投資信託でもうかっている人は、ここ数年の低金利下ではほとんど見たことがない」と打ち明ける。

 独立系金融アドバイザー(IFA)、バリューアドバイザーズ社長の五十嵐修平氏も、「日本のような超低金利下では、国内債券型投資信託は『意味がない可能性が非常に、限りなく高い』と顧客に説明している」と言う。「絶対」と助言することができない証券外務員としてできる最大限の表現だ。

 また、本特集#5『株主優待で人気の20銘柄をスゴ腕投資家が徹底レビュー!人気の裏に業績悪化はないか?』で人気優待株を診断してもらった有名個人投資家のまつのすけ氏(ハンドルネーム)も「今買うと損する可能性が非常に高く、買ってはいけない商品の筆頭に挙げられる」と警告する。

 一方、金利面で国内債券とは対極に位置し、「手を出してはいけない代表格」として五十嵐氏が挙げるのは新興国通貨建て債券だ。

「『日本より格段に高い金利の新興国債券を』と口車に乗せられて買ったものの、保有する内に不安になって相談に来る人が後を絶たない」(五十嵐氏)

 冒頭の営業マンも「新興国通貨建て債券は、大損する人の割合が高過ぎる。一番手を出してはいけない商品だ」と話す。

 債券投資は、国内外でわなだらけだ。次ページでは、国内債券、米国債券、新興国債券の投資信託の実名を公開してパフォーマンスを比較する。超低金利の日本でも金利上昇が進み始めたが、国内債券型については、金利がどれほどになれば投資妙味があるといえるのか、その具体的な水準も開陳。今後、債券投資で間違ってはいけないポイントを、投資のプロの解説付きでお届けしよう。