本当に「超・早期退職」すると
金融資産は底を突く

 以降の試算では、現職を辞めた後の家計を見ていきます。Vさんの相談文から推測すると、退職後は勤労収入を得ること、言い換えれば働くことを望んでいないように感じられます。

 ですが、Vさんが本当に10年後(45歳の時)に引退し、それから一切収入を得ないとなると、ご存命のうちに金融資産(1538万円)が底を突く可能性が高いと思われます。

 現実的な話をすると、住宅ローンは完済しているので住宅関係費用は固定資産税や火災保険だけに減りますが、国民年金の支払いが年間で約20万円発生します。

 戸建て住宅が老朽化していくことを考えると、リフォームや修繕の資金も準備しておく必要があるでしょう。年間の生活費が大幅に減額するとは考えにくい状況です。

 公的年金が65歳から受給できるものの、年を取れば病院に行く回数が増えるなどライフスタイルが大きく変化するため、相応の金融資産を保有しておく必要があります。

 単純計算で、年間支出(無収入なので年間赤字に相当)が毎年76.9万円の状態で20年間を過ごすと、65歳の時点で金融資産はゼロになります。

 このままでは「人生100年時代」に対応できないため、40代のうちにアルバイトなどを始めてはいかがでしょうか。

 Vさんのご希望とは異なるかもしれませんが、ここからは40代のうちに仕事を再開する前提で試算を続けます。

 退職後の3年間はゆっくり過ごし、48歳からアルバイトとして働くことにします。「充電期間」は金融資産を取り崩して生活費を賄うことにします。

 住宅ローンは完済していますが、国民年金保険料の負担が発生するほか、固定資産税や火災保険などの費用は残るので、年間支出は住宅購入前と同じ100万円とします。

 前述の通り、充電期間中は年間支出額がそのまま年間赤字額になります。そのため、仕事を再開するまでの3年間で、計300万円の累積赤字が発生します。先ほど算出した45歳時点の金融資産額(1538万円)から、この300万円を取り崩した残りは1238万円です。

 アルバイトを始める48歳以降は、年間生活費の100万円を稼ぐことができれば金融資産を取り崩すことはありません。そのペースの労働を65歳まで継続すると、1238万円の金融資産額はそのままキープする形で老後を迎えることができます。

 また、Vさんの公的年金額は年間90万~100万円程度と考えられます。65歳で年金受給が始まった後もアルバイトを続ければ、さらに家計は安定するでしょう。ですが、もし65歳で再度リタイアしたとしても、生活費を年金受給額の範囲内に抑えることができれば、ひとまず安心といえるのではないでしょうか。