「恥」に焦点を当てたケア方法の確立が必要
この研究は、調査会社に登録されているパネルを対象とする、インターネット調査として実施された。質問内容は、「糖尿病であることを恥ずかしいと思うことはあるか」、「糖尿病であることを同僚や友人などに伝えているか」という2項目であり、それに加え、心理的幸福感(WHO-5)、糖尿病関連の精神的苦痛(PAID)、自己管理行動(J-SDSCA)、自己管理の効力感(SESD)などを評価。
解析対象者は20歳以上で「2型糖尿病のために受診したことがある」と回答した510人。その主な特徴は、平均年齢63.7±8.7歳、男性67.1%、BMI24.8±4.4、大卒以上51.6%、糖尿病罹病歴13.2±8.5年、インスリン療法中16.9%、HbA1c7.0±1.1%、診断された合併症を有する人の割合11.8%など。
「糖尿病を恥ずかしいと思うことはあるか」との質問には32.9%が「はい」と回答し、「糖尿病であることを同僚や友人などに伝えているか」には17.5%が「いいえ」と回答した。糖尿病を恥じたことのある群は、ない群に比べて心理的幸福感が低く、糖尿病関連の精神的苦痛は大きく、またBMIが高値だった(全てP<0.001)。ただし、実際の自己管理行動(P=0.797)やHbA1c(P=0.362)は有意差がなかった。
糖尿病を恥じた経験のあることに関連する因子を二項ロジスティック回帰分析で検討した結果、女性〔オッズ比(OR)4.78(95%信頼区間2.90~7.89)〕、経済的負担感(OR1.55~3.79)が有意な正の関連因子として特定された。反対に、高齢〔OR0.94(95%信頼区間0.92~0.97)〕、教育歴〔大卒以上でOR0.60(同0.37~0.98)〕、自己効力感〔OR0.91(0.86~0.98)〕は、糖尿病を恥じることに対して保護的に働く可能性が示された。BMIやインスリン療法を行っているか否かは、有意な関連がなかった。
著者らは本研究が、糖尿病のある人の恥ずかしさに焦点を当てた初の研究であったため参考となる文献が限られていたことから、アンケート内容が最適なものではなかった可能性があること、恥と感じた理由について調査していないことなど、いくつかの限界点があるとしている。その上で、「2型糖尿病のある人の約3分の1は、糖尿病関連の苦痛や心理的幸福感の低さを伴う恥の体験を有していた。糖尿病のある人のQOL改善には、恥に焦点を当てた研究およびケア方法の確立が必要である」と結論付けている。(HealthDay News 2023年2月20日)
Abstract/Full Text
https://drc.bmj.com/content/10/6/e003001
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