NIRA(総合研究開発機構)は、後期高齢者医療費の自己負担割合の引き上げについて、アンケート調査を行なった。2022年3月に公表された結果では、66%が引き上げに賛成だった。

 NIRAは、「現役世代の負担が大きすぎて、医療制度が維持できなくなることへの危機感が多くの人びとで共有されている」ことの反映だと分析している。

 また、「負担率を決める基準が所得だけでよいのか」との問題提起をしている。そして、「マイナンバーは金融資産にほとんど付番されていないため、金融資産の把握は難しい。しかし、一定の基準を決め、それ以上の金融資産を持っているかどうかを把握した上で、応能負担を決めるという工夫はできないだろうか」としている。

年金支給開始年齢が70歳になれば、
生活保護受給者が激増する

 公的年金の支給開始年齢は、現在65歳に向けて引き上げられている(2025年に完了)。

 しかし、65歳で終わりになる保証はない。70歳までの引き上げが必要になることはありうる。

 仮に、年金支給開始年齢が70歳に引き上げられれば、70歳までの生活は、年金に頼ることができない。

 企業が70歳までの雇用を認めるかどうかは、何とも分からない。仮に認めるとしても、賃金は著しく低水準にならざるを得ないだろう。

 これによって影響を受けるのは、2025年において65歳となる人々以降だ。これは、1960年以降に生まれた人々だ。

 したがって、「団塊ジュニア世代」も「就職氷河期世代」も、この影響を受ける。

 この世代あたりから、非正規雇用が増える(なお、非正規雇用が多いのは、この世代に限ったことではない。それ以降の世代も同じように多い)。

 現役時代に非正規である人は、退職金もごくわずかか、まったくない場合が多い。だから、老後生活を退職金に頼ることもできない。

 そうなると、生活保護の受給者が続出する可能性が高い。この問題については、拙著『野口悠紀雄の経済データ分析講座』(ダイヤモンド社、2019年)の第4章で詳細に論じたので、参照されたい。