なお、2040年は「就職氷河期世代」と呼ばれる世代が退職を迎える頃だ(「就職氷河期世代」は1970年から1982年頃に生まれた世代であり、2022年で40歳から52歳であり、2040年には58歳から70歳になる)。
「団塊ジュニア世代」とは、1971年から1974年頃に生まれた世代であり、「就職氷河期世代」に含まれる。彼らは、現在は48~51歳であり、2040年には70歳前後になる。
国民の負担引き上げの
具体的手当てが論議されていない
政府見通しの第三の問題は、負担率を上げるための具体的手段が示されていないことだ。
すでに見たように、政府が想定しているのは、負担調整型そのものだ。しかし、その実現のための手段を示していない。
後期高齢者医療保険の窓口負担を引き上げること以外には、具体的な制度改正が行なわれていない。これは、賃金の伸びを高く見ているために、保険料率の引き上げは必要ないと考えられているからだろう。
ただし、実際には賃金は上がらないだろう。負担率引き上げと言えば反対が起きることを恐れて、問題を隠蔽しているとしか考えようがない。実際には、賃金が上がらずに負担が増えるので、生活水準は低下する。労働力率を高めれば問題は緩和されるが、問題は残る。給付調整を考えるべきかどうかも、議論されるべきだろう。
医療保険の自己負担率は
どこまで上がるか
真面目に働いていれば、いつまでも「健康で文化的な生活」が送れるような社会が維持できることが望まれる。しかし、今後の日本で現実にそれが可能だろうか? 事態はそれほど簡単ではない。
後期高齢者医療費の自己負担率が現在のような率でよいのかどうかは、大いに疑問だ。いまと同じような医療を将来も受けられると思っている50歳前後の人は多いだろうが、そうはならない可能性のほうが高い。
自己負担率引き上げの必要性は、後期高齢者だけに限られたものではない。現役世代についても、現在の3割負担で済むかどうか、分からない。