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ただ、大学進学者に限定したうえで東大に進む人の家庭の層を明確につかむのは難しいという。
「東大に行く人と行かない人の違いは、高校より手前の小中学校で既にあると考えられます。そこには家庭の社会経済的地位による格差、それと大きく重なる出身地域の格差、それに性別による格差があります」(松岡さん)
付属の小中学校から内部進学できる有名私大に比べ、東大は受験しなければ入れない。しかも、国立なので私立に比べれば授業料の負担は軽い。そういった意味で、東大の門戸は広いと言える。
年収800万円は必要
だが、東大受験の準備ができるかどうかという問題は残る。同級生が東大に進学しない高校では、そもそも東大を目指そうと思わないかもしれない。公立校でも東大合格に力を入れる学校であれば、東大を目指したいと思うようになるかもしれない。
さらに多くの東大合格者を出す私立中高一貫校ならどうだろうか。中学受験カウンセラーの石田達人さんは言う。
「先取り学習をして高校の内容を高2で終え、高3の1年間を受験勉強にあてます。東大受験に中高一貫校は有利でしょう」
ただ、学費の負担が大きい。
「中学受験して進学させられるのは、特定の家庭の子どもだけだと思います」(石田さん)
石田さんの推計では、首都圏の大手学習塾にかかる小学6年生の年間費用は、90万~120万円。塾に通う児童が増える小学4年から3年間の費用は、夏季講習代などを含めて計250万円とみられる。
ちなみに、小学校から大学まで公立なら教育費は約1千万円。一方、中学校から大学まで私立なら約1700万円、小学校から大学まで私立なら約2520万円かかるという。石田さんはこう指摘する。
「年収が800万円ないと、子ども1人を中高一貫校に送り出すのも難しいでしょう」
実際、文部科学省の調査によると、私立中学に通う生徒の世帯年収は800万円以上が74%を占める。
第3次中学受験ブーム
しかも、石田さんによると、塾通いは低年齢化しているという。つまり、教育にかかる費用がさらに増えるということだ。
「ある塾では、小学1年から入る児童数が前年同期比の1.8倍です。今、第3次中学受験ブームが起きています」
今春の首都圏の中学入試の受験者数は6万6500人で、過去最多となった。(編集部・井上有紀子)
※AERA 2023年3月6日号より抜粋
※AERA dot.より転載