「トイレの調子が悪いんです」。そんな顧客の問い合わせから、困りごとを解決した上で、リフォームを提案、販売につなげる~LIXILのお客さま相談センターで、新たな挑戦が始まっている。生成AIを使うことで、リフォーム提案の成功率は2倍以上に。顧客満足度も約20ポイント上昇した。手がけたのは、中国ファーウェイからやってきた凄腕の女性データサイエンティストだ。挫折の末に彼女が見いだした、成功の要因とは何だったのか?(ノンフィクションライター 酒井真弓)
生成AIプロジェクトは、なぜPoCを抜け出せないのか
生成AIを業務に組み込みたい企業は増えているものの、PoC(概念実証)止まりが後を絶たない。主な理由は3つある。
まずは、「とりあえず生成AIを使ってみよう」という性急な発想だ。それ自体は決して悪いことではないが、現場理解もそこそこにPoCを始め、結果として現場に受け入れられずに終わってしまう。
さらに、多くの企業が見落としがちなのが、データの前処理の重要性だ。生成AIを有効活用するには、AIが処理しやすい形にデータを整備する必要がある。一般ユーザーでも、入力するデータやプロンプトによって生成AIの回答精度が変わることを思い浮かべれば分かりやすい。実際にやってみて初めて、その重要性を痛感する企業も多いようだ。
そして、最も欠けてはいけない重要なピースが、現場と推進部門の連携だ。なぜ生成AIを導入するのか、業務はどう変わるのか、現場の疑問や不安に向き合う必要がある。LIXILは、これらの課題をどう乗り越えたのか。