米著名実業家イーロン・マスク氏は人工知能(AI)を巡って眠れぬ夜を過ごしているかもしれない。だが、決してマスク氏だけではない。ハイテク大手はAIサービスを提供するため、迅速に動いてあらゆるものを破壊する構えだ。マスク氏の言う「実存的不安」はさておき、熱狂渦巻くこのAIブームに乗り遅れれば、ハイテク大手にとっては突如として極めて現実的な投資リスクが生じる。機会学習や自然言語処理といったAI技術における応用は、話題としては盛り上がる「はるか未来の壮大な計画」から、「ハイテク企業が投資対象だと判断されるのに不可欠なもの」へとほぼ一夜にして豹変(ひょうへん)した。2月27日にはソーシャルメディア業界でまだ生半可なAI絡みの発表が相次ぎ、こうした流れを改めて印象づけた。メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はその日、フェイスブックへの投稿で、AIツールや「AIペルソナ」といったプロダクト全般で一段と速く画期的な発展を遂げるためにAI技術開発の人材を急きょ集約していると明らかにした。メッセージアプリ「スナップチャット」を運営するスナップも同日、有料サービス「Snapchat+(スナップチャットプラス)」向けの実験的な機能として、全く悪びれることなく不完全なAIチャットボット(自動対話システム)を導入した。一方、IT(情報技術)ニュースサイト「ジ・インフォメーション」は同日、マスク氏が対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」の競合版の開発に向けて研究者と協議していると報じた。分断を招くようなテーマについて制限をより少なくする構想を描いているという。