企業経営者は、率直で有用なインプットをくれた投資家とは、エンゲージメントを継続したくなるはずだ。次回の面談では、企業側が宿題になっていた課題について進捗報告し、投資家側も対象企業の開示情報を深く理解したうえで指摘をするようになる。
一方で、エンゲージメントの経験がこれまで少なかった企業では、短期の業績、トップの選解任や役員報酬パッケージといったガバナンス、株式持ち合いの解消や配当政策など余剰資金活用といった、社内でもまだ結論の出ていない課題について指摘を受けることに対して不安が先に立ち、腰が引けてしまうのも無理からぬことだ。
こうした企業にこそ、できるだけ早く、エンゲージメントに挑戦していただきたい。いわゆる「物言う株主」すべてがアクティビストというわけではない。チャレンジを続けることで、議決権行使での反対票や株主提案を提出されないような信頼関係を構築することが可能になる。
エンゲージメントにこれから本格的に取り組む企業に向けて、心得3カ条をとりまとめた。
ESG経営の成否を決める
エンゲージメントの心得3カ条
【心得1】自社が対話したい投資家を選ぶ
株主はすべからく重要だ。ただし、長期保有の意思のある機関投資家と短期的なリターンに関心のある投資家とで、同様のコミュニケーションをとる必要はない。
まずは自社にとって理想的な株主や投資家像を特定することから始める。そして、理想像に近そうな投資家複数と積極的にエンゲージメントを試みてみる。そのうえで、自社にとって新しい視点をもたらし、高め合える投資家を選別していくことが肝要だ。
【心得2】トップがエンゲージメントの先頭に立つ
ESGは実は「(E+S)× G」であって、Gがゼロであれば企業価値は無に帰す。だからESG情報の中で、投資家にとって特に関心度が高いのはGだ。ガバナンスは企業トップの意思決定なくして変革することは難しく、特に社外取締役も含めた取締役会のダイバーシティや、サクセションなどのアジェンダについて回答するのはトップである必要がある。