新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はINPEX、ENEOSホールディングス、出光興産の「エネルギー」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
エネルギー大手3社は大増収も
原油高バブルに終焉の兆し
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のエネルギー業界3社。対象期間は2022年8~12月の四半期(3社いずれも22年10~12月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・INPEX
増収率:58.4%(四半期の売上高6259億円)
・ENEOSホールディングス
増収率:35.9%(四半期の売上高3兆9411億円)
・出光興産
増収率:34.7%(四半期の売上高2兆3972億円)
エネルギー業界の主要3社はいずれも、前年同期比で約3~6割の大幅増収だった。
前四半期の記事でも解説した通り、各社が大幅増収を達成した要因は、昨今の原油価格の高騰と円安によるプラス効果である。
これらが追い風となり、3社はそろって「7四半期連続」で増収を達成中だ。しかも、その全てが2桁以上の増収となっており、中には売上高が2倍以上となった3桁増収まである。
だが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を機に始まった原油高は、22年夏をピークに下落基調に転じ、足元でも落ち着きを見せている。
冒頭で示した各社の四半期増収率も、他業界と比較すると非常に高いのは確かだが、以前ほど爆発的な伸びではなくなっている。
例えばINPEXの四半期増収率は、22年1~3月期は99.2%、22年4~6月期は140.7%、22年7~9月期は71.1%と驚異的な数値をたたき出していた。それに比べると、今四半期はやや失速した印象を受ける。
ドル円相場も以前の「超円安」状態を脱しており、3社を大幅増収に導いた“2大要因”が失われつつある。
先行きが懸念される状況を踏まえ、INPEXは23年12月期の通期業績が減収減益に沈む見通しだと発表した。3月期決算のENEOSホールディングスと出光興産も、23年3月期の通期業績予想を下方修正している。
「原油高バブル」の終焉を感じさせる、各社の業績予想の中身とは――。次ページで、各社の増収率の推移と併せて詳しく解説する。