米長期金利はインフレ継続懸念で高止まりも、FRBの追加利上げ幅拡大で沈静化は可能Photo:PIXTA

米国のインフレ高止まり懸念で、米長期金利は上昇した。現在の水準はインフレ継続を織り込んでいる。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)が追加利上げ幅を拡大すれば、インフレ沈静化は十分に可能である。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

足元の長期金利上昇は
「インフレが収まらない状態」を示唆

 22年11~12月の低調なクリスマス商戦の結果を受け、一時3.30%を割り込むかに思われた米国10年債利回りだったが、2月3日の1月米雇用統計公表後に大幅にリバウンドし、2月はほぼ1カ月間利回りを上昇させ続ける結果となった。

 3月に入ると遂に4.0%の大台を上回ってきたのだが、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げのゴールが遠のいた、という思惑だけで長期金利が上昇したとの説明は正しいとは言い難い。

 FRBはなかなか収まらないインフレに対し、これを抑制するためにさらなるコストを払うだけであり、追加の利上げによってより一層需要が抑制されれば、むしろインフレ沈静化への期待から長期・超長期債利回りは下がりやすいといえるためだ。

 つまり、足元の米国10年債利回りの上昇はいつまでたっても「インフレが収まらず、高い金利が続く」との思惑から生じている公算が高く、実際、米国債5年後5年金利(今から5年後の5年国債の金利を米国債カーブから逆算したもの)は3.75%の節目レベルに到達している。

 次ページ以降、この長期金利の水準が意味するところを読み解くとともに、FRBがインフレを沈静化することが可能かについて検証する。