米中対立がAI分野で先鋭化

 米国は中国が台頭する状況に懸念を強めている。ファーウェイの全面禁輸に加え、TikTokなど外国企業のITサービスの利用を禁じる権限を米国政府に付与する法案成立も目指している。なお、欧州委員会、カナダ、わが国でも政府職員の業務用端末でのTikTok利用が禁止された。カナダでは、「19年と21年の連邦議会選挙に中国が介入した」との報道もある。また、米国では港湾で稼働しているクレーンが、「中国によるデータ抜き取りの手段になる」といった懸念が浮上し始めている。

 そうしたリスクに対応するために、米国は日韓台との連携を強化し、半導体など先端分野での対中包囲網をさらに強固にする意向だ。また、アップルなどは生産拠点を中国からインドに移管しており、インドともAIなど先端分野での連携を強化しようとしている。

 一方、中国共産党政権は、米国などの圧力に対抗し、AI利用を加速させようとしている。象徴的なのが、3月5日から始まった全人代と同じタイミングで実施された、全人代代表の改選だ。経済分野の代表としてAI開発企業である科大訊飛(アイフライテック)トップの劉慶峰氏が再選された。一方、テンセントの馬化騰(ポニー・マー)氏は代表から退いた。

 習政権は、産業補助金の積み増しなどによってAI開発、ロジック半導体の微細化などの製造技術向上を加速するはずだ。また、2月下旬から3月上旬にスペイン・バルセロナで開催された世界最大規模の移動体通信展示会「モバイル・ワールド・コングレス」にて、ファーウェイは、政府や大企業だけでなく、中小企業向けの事業を強化すると発表した。シェアは低下したものの依然としてファーウェイは世界トップの通信基地局メーカーだ。その地位を生かし、同社がAIなどを用いたIoTサービスを新興国の中小事業者に提供するもようだ。