レストランだけでなく、買い物で並ぶのも苦痛
こうした理由から、「食べるために待つ」という感覚は、韓国人からしてみれば理解し難いということであった。それは買い物でも同じで、レジを並んで待つのも苦痛以外の何物でもない……という感じである。
それが、現在ではどうだろう? 前述のテレビ番組に出てくる店のように「マッチブ」と呼ばれる人気グルメ店はいつも多くの人でにぎわい、「待ってでも食べたい」という人が途切れることなく訪れ、行列を作っている。
また、ユニクロのようなファストファッションから高級ブランドのグッチやシャネルまで、海外の人気ブランドの新商品が発売されるとなれば、「何とか手に入れよう」と早朝から開店待ちの列ができ、ニュースに取り上げられることもある。
有名ブランドや高価な商品だけではない。最近では、マート(スーパー)や農協の安価な新商品で、フライドチキンや大福が話題となり、連日、多くの客が列をなして買い求めたことも話題となった。
なぜ、韓国人は行列をいとわなくなったのか。その要因の一つは、2019年7月(※)より前に日本を訪れる韓国人が爆発的に増え、日本滞在中に行く先々で行列ができているのを見たり自分たちも並んだりという体験をしたことにある。そのときの経験が今、韓国で生かされているのだ。客が並ぶ店には並ぶ理由があり、価格に対してお店(味)のクオリティーが高いということを、多くの韓国人が日本で学んだのではないか。
「待つことが耐えられない」から「待つのも楽しみ」へ、意識が大きく変化したのは興味深い。
※編注…2019年7年に日本が輸出管理の厳格化を発動、これ以降韓国では日本製品の不買運動などが起こり、日韓関係が悪化した。