世界経済「プラス要因」は密かに続出、悲観論者が見過ごすポジティブサプライズの下地Photo:PIXTA

インフレ、エネルギー情勢、パンデミック……。米著名投資家のケン・フィッシャー氏は、グローバルなリスクとみなされてきた諸問題について、経済にプラスとなる要因も増え始めたと指摘する。数々の定量データを基に、悲観主義者には見えない世界経済の現状をひもといた。

経済にプラスとなる要因が
ひそかに続出している

 あなたには見えているだろうか?恐ろしいニュースの連続が大半の投資家から判断力を奪う中、経済にプラスとなる要因がひそかに次々と増えていることを。

 沈んだ投資家心理と上向く現実との差の拡大は、ポジティブサプライズに先行する――私の直近の寄稿(『「株は悲観ムードの今こそ買い」米著名投資家が明かす株価回復“秘密の燃料”とは?』参照)で私が予想した回復の燃料だ。今回はそれに上乗せしていく――たとえ見えていても、ほぼ誰も受け入れていないだろうプラス要因を説明する。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産十数兆円規模の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 ここで述べていくことは、過度に楽観的であるように聞こえるかもしれない。そのような反応こそが、世界的な弱気相場が底値付近にあり、私が解説した「不信の悲観論」によって投資家が悪いニュースだけに着目し、プラス要因を退ける際によく見られるものだ。

 確かに日本や米国、英国、ユーロ圏の消費者関連調査は悲観的な結果が出ている。バンク・オブ・アメリカが11月に実施した世界中のファンドマネジャーを対象とした調査では、回答者の77%が2023年の景気後退を予想した。ロシア、中国のゼロコロナ政策、台湾を巡る緊張に起因する地政学的不透明感が炎をあおる。

 だが、22年に渦巻いた不満はさておき、状況を正確に捉えておこう。まず、インフレについて。物価急騰は世界中で、また日本においても円安でエネルギー価格上昇が悪化する中、主な懸念となってきた。

 ところが、多くの西洋諸国では、インフレ指標が落ち着きを取り戻しつつある。米国とユーロ圏での物価関連指標は、直近のピークから減速。日本のCPI(消費者物価指数)は依然40年来の高水準にあるが、世界中でインフレの落ち着きを示す先行指標は多く、大きな安心材料となるだろう。

 インフレ、エネルギー情勢、パンデミック……。グローバルな市場リスクとなってきた諸問題だが、経済にプラスとなる統計も増え始めているのだ。以降では、その実相について定量データを踏まえて解説していく。