東洋建設がインフロニアTOBで「密約」の証拠メモ入手!任天堂創業家との対立で深まる疑惑Photo:PIXTA

海洋土木の東洋建設と、同社に買収提案する任天堂創業家の資産運用会社の対立が激化する中、“密約”が争点に浮上している。密約とは、昨年の準大手ゼネコンのインフロニア・ホールディングスによる東洋建設への株式公開買い付け(TOB)を巡り、同社役員がインフロニアに経営参画する内諾を得ていたというもの。今回、ダイヤモンド編集部は密約に関わる内部メモを入手。密約の存在をうかがわせる東洋建設関係者の発言が記されたメモの内容を完全公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

東洋建設は臨時総会を招集しないと発表
任天堂創業家は「“密約”が存在」と主張

 権利濫用に該当する不適当なもの――。

 海洋土木の東洋建設は3月10日、同社に株式公開買い付け(TOB)を提案している任天堂創業家の資産運用会社、ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)による臨時株主総会の招集請求をそう断じ、総会を招集しないと発表した。

 東洋建設の“ゼロ回答”からわずか3日後、今度はYFOが司法の場に争いを移した。大阪地方裁判所に臨時株主総会の招集の許可を申し立てたのだ。

 YFOは6月の定時株主総会に向けてYFOが推す取締役の選任を求める株主提案をする方針をすでに固めている(『【スクープ】任天堂創業家のファンドが東洋建設に株主提案へ、6月総会で「取締役選任」を要求』参照)。株主総会に向け、攻防は激化の一途だ。

 そもそもYFOの買収提案は1年ほど前にさかのぼる。2022年3月に準大手ゼネコンで前田建設工業を傘下に持つインフロニア・ホールディングスが東洋建設にTOBを実施。そこに割って入ったのがYFOだった。

 YFOは同年5月に東洋建設に対し、友好的な協議を前提とし、TOBによる非公開化を正式提案。TOB価格はインフロニアの1株770円を大きく上回る1株1000円とした。

 インフロニアによるTOBが不成立となり、その後、YFOと東洋建設は秘密保持契約を締結し、複数回にわたり協議の場を持った。YFO代表で任天堂創業家の山内万丈氏と東洋建設の武澤恭司社長のトップ会談も持たれた。

 だが、両者の主張は平行線をたどった。東洋建設は「(非公開化で)会社の存続が危うくなる」などとする一方、YFOは「東洋建設は具体的な協議に応じようとしない」と不満をにじませてきた。

 YFOが問題視したのが、買収提案の検討を進めない東洋建設の姿勢だ。今年に入り、株主提案の方針を打ち出すなどYFOが攻勢を強めた背景には、東洋建設に対する不信感があるとみられている。

 延長線上にあるのが、臨時株主総会の招集請求だといえる。「(東洋建設の)コーポレートガバナンス(企業統治)上の問題点を解明する」。YFOは、臨時株主総会の開催に加え、会社法に基づく第三者の調査者を選定するよう求めた理由をそう説明する。

 問題点として、YFOが挙げるのが“密約”の存在である。YFOは提案書の中で、インフロニアによる東洋建設のTOBを巡り、同社役員がインフロニアへの経営参画の内諾を得ていたにもかかわらず、公表していなかったと批判している。

 では、実際にそのような密約は存在したのだろうか。ダイヤモンド編集部は今回、東洋建設とYFOの関係者のやりとりを記した内部メモを独自入手した。やりとりからうかがえるのが、密約の存在だ。

 次ページでは、メモに記された東洋建設の関係者の発言内容を完全公開する。また、密約が存在した場合に生じる法令上の問題点なども明らかにする。