シリコンバレー銀行破綻で「マネーゲーム終焉」へ、日本の景気への影響は?Photo:123RF

米国の中堅銀行の破綻が立て続けに3件発生したことは、超低金利をベースに続いてきたマネーゲームの終焉を象徴する出来事といえる。今回の調整局面で、過去と根本的に異なるのは、インフレ圧力が強いことだ。今後、米FRBをはじめとする中央銀行は、三つの課題を克服する必要がある。これは、かなり難しいかじ取りを余儀なくされる。わが国の日本銀行は慎重かつ段階的に、金融政策の追加修正を進める公算が高い。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

シリコンバレー銀行破綻は、“いつか来た道”

 2023年3月に入り、米国で銀行破綻が立て続けに3件発生した。主に暗号資産関連企業と取引を行ってきた、シルバーゲート・キャピタル傘下のシルバーゲート銀行とシグネチャー銀行の2行に加えて、ITスタートアップ企業と取引を主体としてきたシリコンバレー銀行の3行だ。これらの銀行の破綻は、ある意味、これまで超低金利をベースに続いてきたマネーゲームの終焉を象徴する出来事といえるだろう。

 08年9月のリーマンショック後、世界的に超低金利の環境が続いてきた。有り余った資金は、一部の暗号資産やIT関連企業への投資に向かった。その様相は、投資というよりむしろマネーゲームに近かった。「買うから上がる、上がるから買う」の循環の中で、多くの資金がゲームに踊った。ゲーム感覚で株や仮想通貨を買う個人も相場に参入し、マネーゲームに踊る投資家は増えていった。

 ところがインフレが進み、22年3月以降、米FRBは利上げを開始せざるを得なくなった。金利上昇は株価を下落させ始め、徐々に過度な楽観はしぼみ、ゲームは終焉を迎えることになる。そうした状況下、過度なリスクテイクが裏目に出たことで、シリコンバレー銀行などは破綻した。ゲームの宴は終焉しつつある。それは過去、幾度も繰り返されてきた“いつか来た道”だ。

 ただし、現在の世界経済の状況は、リーマンショック後の調整局面とは異なる。米国を中心にインフレ懸念は強い。中央銀行はインフレの鎮静に取り組みつつ、マネーゲームの後始末や景気下支えに取り組まなければならない。これらの要件を同時に満たすことは至難の業だ。

 実質的に金融緩和の余地がなくなったわが国の景気回復は、かなり緩慢にならざるを得ないかもしれない。