楽天とSBIの競争は利用者にはメリット

 それに比べ、楽天証券のつみたてNISAの利用者は、30代以下の若年層が6割を占めるという。証券会社とすれば、「小口」のお客だが、それでも熱心に取り組むのは、先行投資の意味が大きい。投資信託の積み立てに誘導できれば、一定期間にわたって付き合いができる。今は少額でも、金融資産が積み上がり、だんだん投資に慣れてくれば、もっと欲が出ておいしい商品を買ってくれるだろうと期待できる。しかも、人間は現状維持に陥りやすいものだ。いったん口座を開き、その操作性に慣れてしまえば、別の金融機関に移るのが面倒になる。投資初心者をエントリーさせることは、そのまま長期の囲い込みにつながるのだ。

 だからこそ、この2社は互いの動きによく目を配っている。

 かつて投資信託の最低購入金額は1万円からだったが、ネット証券間で引き下げ競争が起き、5000円になり1000円になり500円になり、とうとう現在の100円まで引き下げられた。

 これは17年5月に楽天証券が「業界初の100円から始める投資信託」と打ち出したのが最初だが、その発表の約10日後にSBI証券もすぐに100円に引き下げると表明。しかも、楽天証券の100円引き下げ実施予定日より2日繰り上げて開始するという後出しジャンケンに出た。ともかく若者層が今わずかワンコインで投資ができるのは、この2社の競争のおかげと言っていい。

 相手の出方を見て機先を制するのはライバルの宿命だが、21年に楽天証券が投信残高に付与するポイント還元の変更(というか改悪)を行ったときには、SBI証券は間髪入れずに自社への乗り換えキャンペーンを開始した。このスピード感、外野で見ている分にはおもしろいが中の人はさぞ大変だろう。