ポイント王者の楽天、追撃するSBIはマルチポイント戦略

 若者層の投資ハードルを下げるために使われているのが「ポイント」だ。両社のNISAおよびつみたてNISAのサービス比較で見ると、双方とも投信買い付けでポイントが貯まる。

 ポイントといえば、やはり楽天ポイント=楽天経済圏の存在感は大きい。楽天市場の利用でたまった楽天ポイント(期間限定ポイントは除く)を使い、楽天証券でつみたてNISAの投資ができる。ちなみに、1ポイント以上利用して月に3万円以上の投信積み立てをすれば、楽天市場でのポイント付与率がアップする(「楽天ポイントコース」と、楽天銀行と楽天証券の口座連携「マネーブリッジ」の設定が必要)。こうして楽天ポイントを効率良くため、それを投資にも回すことで低コストにNISAが利用できるのが、一番の強みだ。

 もちろん、楽天カード決済による投信積み立てでも同ポイントが貯まる。楽天証券では、NISAを含む投信積み立ての5割がクレカ決済を利用しているという。つみたてNISA利用者の約47%が女性というのも大きな特徴で、SBI証券のように株式投資から入ってきた個人投資家より、楽天市場や楽天トラベルなどグループサービスからエントリーしてきたユーザーが多い結果だろう。

 しかし、ポイント戦略ではSBI証券も負けてはいない。こちらの武器は、マルチポイントだ。投信の保有残高に対してポイントが貯まるが、Tポイント、Vポイント、Pontaポイント、dポイント、JALマイルから選ぶことができる。ポイントを使った投資はこれまでスポット買い付けのみだったのが、2月27日からTポイント、PontaポイントはつみたてNISAへの対応も始めた。

 さらに、ポイント付与の還元率にも違いがある。楽天証券は「投資信託の保有残高に対して毎月ポイント付与」だったポイントプログラムを、21年4月に変更して「残高が一定金額に達したときに付与」と変更した。月末時点の残高が、初めて10万円に到達した場合は10ポイント、初めて30万円に到達した場合は30ポイントというようになった。

 それに対し、SBI証券は月間保有残高に応じてポイント付与という方式を変えていない。月間保有残高1000万円未満で通常銘柄の場合0.1%となっており、年間40万円のつみたてNISAを利用する場合は、だいたいこの付与率となるだろう。もし、年末に40万円の残高があれば、その月だけで400ポイントがもらえる計算となる。

 還元率だけ比較すればSBI証券のほうが優れて見える。とはいえ、楽天ポイントのユーザーにとって、違うポイントの付与率が魅力的に映ったかは定かではない。

カード積み立ても激化中、楽天カードか三井住友カードか

 先にも書いたが、つみたてNISAにクレジットカード決済を使っている資産形成層も多い。毎月の積み立てでカードのポイントがたまるのがメリットで、楽天証券はむろん楽天カードで、そのポイント還元率はファンドによって0.2%または1.0%となっている。なお、楽天カードで電子マネー「楽天キャッシュ」にチャージすると、チャージ額の0.5%が還元されるので、その楽天キャッシュを積立資金とする方法もある。

 片や、SBI証券が強力なタッグを組んでいるのが三井住友カードだ。つみたてNISAではカードのランクに応じて0.5~最大5%のVポイントを付与する。たまったVポイントは投信買い付けのほか、ネットやリアルのVisa加盟店で使える。さらに、24年にはTポイントとの統合も予定されており、実現すれば相当強力なポイントとなるだろう。また、三井住友フィナンシャルグループの金融アプリ「Olive」とも連携を強め、Olive上でSBI証券口座の管理もできるという。

 また、SBI証券は金融仲介の形でタカシマヤや東急、大丸松坂屋などともカード投信積み立てを始めており、つみたてNISAも可能だ。各カード独自のポイントがたまり、それを買い物に使うことができる(ポイント付与の仕組みはカードごとに異なる)。このように、最近SBI証券は異業種との金融連携を積極的に進めている。気づくと自分が普段使っている流通系カードでもSBI証券の投信積み立てができるようになっていた――ということもありそうだ。