安倍政権は国土強靭化を掲げ、公共事業の拡大に動きだした。だが、日本の“朽ちるインフラ”問題は、短期の景気対策では解決しない。問題解決の処方箋を提示する。

ねもと・ゆうじ
1954年鹿児島生。東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。2006年東洋大学に日本初の公民連携(PPP)専門の大学院開設を機に、同大経済学部教授に就任。現在同大学PPP研究センター長を兼務。専門は公民連携・地域再生。主要著書として『朽ちるインフラ』(日本経済新聞出版社)、『地域再生に金融を活かす』(学芸出版社)など。内閣府PFI推進委員会委員、国土審議会委員、自治体公共施設マネージメント委員会委員他兼職多数

 笹子トンネル事故以来、社会資本、つまり公共施設やインフラの安全に対する注目が高まっている。

 日本の社会資本は短期間に集中して整備された。国土交通省社会資本整備審議会の資料によると、道路が最も多く建設されたのは1960年代後半、橋梁が70年代前半、河川(水門、ダム)が80年前後、港湾が80年代前半、公営住宅が70年代前半、公園が70年代後半、学校施設が70年代後半から80年代前半である。これらは現在30~40年経過していることになる。

一斉に老朽化が進む
日本の社会資本

 今後これらがいっせいに老朽化し崩壊の危険は加速度的に高まる。これが“朽ちるインフラ”問題だ。老朽化の症状が唯一笹子トンネルの天井板だけに表れ、他は安全だという理屈はあり得ない。同じような事故は全国どこで起きても不思議はない。この危機感をまず共有すべきだ。