横断歩道を歩く人々写真はイメージです Photo:PIXTA

ようやく議論されるようになってきたものの、依然として日本の賃金は上がっていない。どうして日本の賃金は主要国と比較して低下してしまったのだろうか。どうしたら、日本の賃金を上げることができるだろうか。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

主要国の実質賃金と、日本の実質賃金を比較すると何が見えるか

 日本の賃金が上がっていないことは誰でも知っている。今年の春闘では大企業の賃金は上がっているが、中小企業がどうなるかはまだ分からない。大企業のみならず、すべての賃金が上がることを期待したい。

 ただし、大企業では賃金が上がったといっても、エネルギー、食料価格の上昇を考えると目減りしている。賃金は実質が大事ということである。

 図1は、主要国(G7+韓国)の平均年実質賃金(2021年実質購買力平価ドル)の推移を見たものである。似たような図は広く出回っているが(本欄『「日本で賃金が上がらない」本当の理由、GAFAがなくても給料は上がる?』21年11月22日掲載にもある)、日本の賃金が上がっていないことが明らかである。

 1990年には、日本の賃金に対して、アメリカは3割上回っていたが、カナダ、ドイツ、イタリアは1割前後上回るだけだった。フランス、イギリスは日本より下、韓国は日本より4割下であった。

 ところが、2021年には、アメリカの賃金は日本より9割、カナダ、ドイツは4割、イギリス、フランスは2割5分、韓国は1割弱、イタリアは3%、日本より高い。

 1990年に、日本人は、日本の賃金はすぐにカナダ、ドイツ、イタリアを上回るだろうし、いずれアメリカよりも高くなると思っていただろう。まして、韓国が日本を上回るなどと予想した人はいなかっただろう。

 どうして日本の賃金は低下してしまったのだろうか。どうしたら、日本の賃金を上げることができるだろうか。