2021シーズンに2年連続4度目のJ1制覇を達成し、喜ぶ川崎フロンターレの選手たち2021シーズンに2年連続4度目のJ1制覇を達成し、喜ぶ川崎フロンターレの選手たち Photo:JIJI

企画アイデアを考えるとき、「100本ノック」戦法をとる会社もあるだろう。しかし、川崎フロンターレが集客プロモーションを実施する上で導き出した重要なポイントは、「3つの指標に沿う」ことだという。斬新な企画の連発で何かと話題になる川崎フロンターレが大事にしている3つの指標とは何なのか。クラブの名物企画人である天野春果氏の証言を基にひもとく。Jリーグ各クラブの取材を積極的に行う原田大輔氏の著書『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)の一部を抜粋・編集して紹介する。

集客プロモーションで
大切な3つの指標

 おもしろければいいわけではなく、華やかならばいいわけでもない。川崎フロンターレには集客プロモーションを実施するうえで、3つの確かな指標がある。

 その指標を、クラブを代表して具体的に言語化した天野が意図を語る。

「なにか企画を考えていくときに、自分のなかにも明確な“目盛”が必要でした。この企画が本当にいいものなのか、それとも方向性が間違っているのか。それを判断するとき、感覚だけではなく、しっかりとした基準を持っていることが、自分にとっても、クラブにとっても大事だと考えました」

 その“目盛”として導き出されたのが、
「地域性」
「話題性」
「社会性」
 という3つのキーワードだった。

その地域にふさわしい企画に
話題性というスパイス

「まずは地域性。川崎フロンターレを通じて、やはり地域を感じてもらえるような企画でなければいけない。これは川崎をホームタウンとするクラブである以上、絶対です。それに当てはめると、たとえばジャニーズ事務所のタレントに出演を依頼して、ただ単に観客を集めるだけでは地域性にそぐわないということになります。2021年に実施した『坂本九ランド』は、スーパースターである坂本九さんが川崎生まれ川崎育ちというのがベースにあることで、地域性を取り入れることができています。ただし、地域性の目盛が増えすぎてしまうと、一方で話題性が乏しくなってしまうおそれがある。そうなると、各メディアに取り上げてもらえなくなってしまうので、ここに話題性というスパイスを加える必要があります」

社会性を加えて
支援を得やすい企画に

「地域性、話題性に社会性が加わることで、手伝ってくれる人が増えるんです。パートナー企業からの支援も得やすくなれば、協力者も得やすい。また、社会性のあるイベントは、新聞などのスポーツ面だけでなく、社会面などでも取り上げてもらえる効果がある。川崎フロンターレを通じてイベントに協力してくれた方々の取り組みが、より多くの人に知ってもらえるきっかけを秘めています。そうした要素から、この3つを軸にしてさまざまなイベントを企画していくようになりました」