子どもの医療費助成制度は各自治体の地方単独事業
東京都の高校生向け制度は公的保険対応分が対象に
子どもの医療費助成制度は、それぞれの自治体が「地方単独事業」として、地域の実情に応じて事業を行っている(新潟県は交付金)。都道府県は、制度の大枠は決めているものの、実施主体は市区町村だ。都道府県の制度の範囲内で実施するものについては、都道府県から5割の補助が受けられる。だが、市区町村が独自の助成を上乗せする場合、都道府県の制度範囲を超える部分については、市区町村が全額負担することになっている。
健康保険のように法律で定められた給付ではないので、それぞれの自治体の財政や政策によって、次の5つの点で助成内容に違いが出ている。
(1)助成対象の子どもの年齢
(2)通院、入院による差
(3)親の所得制限の有無
(4)一部負担金の有無
(5)助成方法が、現物給付か償還払いか
今回、東京都が新たに創設したのは「高校生等医療費助成制度(マル青)」で、高校に就学する年齢の子どもの医療費の自己負担分を助成するものだ。
具体的な対象年齢は、15歳の4月1日から18歳の3月31日までの子どもで、高校に在学していなくても助成を受けられる。原則的に、その子どもの親などの養育者が申請するが、誰からも監護されていない場合は子ども自身が申請することができる。ただし、助成を受けられるのは、養育者の所得が一定以下であることが条件だ。
助成の対象になる医療費は、公的な医療保険(健康保険)の適用となっている治療費の自己負担部分だ。病院や診療所に支払ったお金でも、差額ベッド代など保険適用外のものは除外されている。
医療機関を受診するときに、市区町村から配布された医療証を提示すると、通院は1回につき200円を超える部分が現物給付される。また、薬局での薬代と訪問看護は無償で受けられる。入院した場合は、入院中の食事代は自己負担するが、それ以外については全額、無償で治療を受けられる。
この制度の導入によって、東京都は子どもの医療費助成制度の対象年齢が18歳年度末に引き上げられることになる。とはいえ、親の所得制限や通院時の患者負担も設けられており、対象年齢の子どもの医療費が全て無償になるわけではない。
だが、23の特別区は独自の助成を上乗せすることを表明しており、親の所得制限なしで、保険適用の医療費は無償になる。一方、その他の市町村は、都の制度にのっとり、親の所得制限や自己負担を設けているところも多い。対象年齢が18歳の年度末に引き上げられたのは喜ばしいことだが、同じ東京都のなかでも助成内容に差が出ているのだ。
23区に比べて、助成内容が劣る地域で暮らしている人のなかには、不満を感じている人もいるのではないだろうか。この助成内容を全国に広げて確認してみると、その格差はさらに広がる。