今回の研究で得られた新たな知見

 解析対象は、2012年4月~2020年9月に特定健診または後期高齢者健診を受けた人から、ベースライン時に胆石の既往のあった人と追跡期間が1年に満たなかった人を除外した61万1,930人。中央値5.68年(最長7.5年)の追跡で、2万3,843人(3.9%)が胆石を新規発症していた。

 多変量回帰分析の結果、男性〔ハザード比(HR)1.09(95%信頼区間1.06~1.12)〕や、高齢であること〔40歳未満を基準とするハザード比が50代1.94、60代2.54、70代3.34、80代3.97〕は、胆石発症に関連のあることが明らかになった。検査値関連では、BMI〔1kg/m2ごとにHR1.04(同1.04~1.05)〕、HbA1c〔1%ごとにHR1.03(1.01~1.04)〕、GGT〔100U/LごとにHR1.15(1.13~1.16)〕の高さが、胆石リスクの上昇と関連していた。また既往症としては、高血圧、糖尿病、腎臓病、肝疾患、ピロリ菌感染、慢性肺疾患、脳血管疾患、心不全、がん、認知症、リウマチ性疾患が、胆石の発症に関連していた。

 反対に、習慣的な運動は、胆石リスクの低下と関連していた〔週に1時間以上のウォーキングでHR0.91(0.89~0.94)〕。また、LDL-C〔10mg/dLごとにHR0.98(0.98~0.99)〕や収縮期血圧〔10mmHgごとにHR0.98(0.97~0.99)〕が高いことも、胆石リスクの低下と関連していたが、これは著者によると、脂質低下薬や降圧薬による治療を受けている人の存在が結果に影響を及ぼしている可能性があるという。

 以上の結果のうち、著者らは既報研究には見られない新たな知見をいくつかピックアップし、考察を加えている。

 まず、従来は男性より女性の方が胆石リスクは高いとされており、その理由として女性ホルモンが胆石の形成を促すように働くためといった解釈がされていた。今回の研究で男性の方がハイリスクという結果が示されたことを説明可能な一つの理由として、「近年、男性の肥満化傾向が続いているために胆石リスクが上昇してきているのではないか」と記されている。このほか、ピロリ菌感染や腎臓病、慢性肺疾患、がん、リウマチ性疾患と胆石との関連も、大規模な縦断的解析の結果として示したのは、本研究が初めてのことだという。

 論文の結論は、「胆石の発症リスクを抑制するための対策に、これらの研究結果を活用できるのではないか」とまとめられている。(HealthDay News 2023年3月13日)

Abstract/Full Text
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0274659

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