協議では、ロシア、ウクライナ双方の言い分を徹底的に聴き、長期間を掛けることを覚悟する。一方、協議が始まった時点で、欧米は経済制裁を解く。ノルドストリームを復旧し、ロシアは天然ガスの供給を再開する。

 ウクライナで人命が失われているのと同時に、世界中の人々が経済危機に苦しんでいる。世界的なインフレの悪化を止めることも急務である。

 これ以上戦争が続けば、日本国内でも国民が物価高に苦しみ続けることになる。その上、日本を取り巻く安全保障環境も悪化し、その対応として「防衛増税」が断行される。国民の負担はさらに増してしまう。

 岸田首相は、「必勝しゃもじ」をゼレンスキー大統領に渡して、徹底抗戦を支援している場合ではないのだ。

 こうした「第3の道」はあくまで理想論だが、岸田首相がプーチン大統領とコンタクトを取り、和平に向けた「橋渡し役」を買って出ることも、国際平和を目指す上では重要なのではないか。

 ここからは、その実現可能性を考えてみたい。

ロシアの中国依存が進むと
シベリアなどが「チャイナタウン化」?

 ウクライナ紛争開戦後、ロシアは日本を厳しく批判してきた。だが、ロシアは本音では、日本との関係を維持することを望んでいるはずだ。

 というのも、ロシアは開戦後、日本の「サハリンI・II」の天然ガス開発の権益維持を容認した。欧米によるロシアへの経済制裁と、それに対するロシアの報復が過熱する中で、この判断を下したのだ。

 その理由は、中国への過度な依存を避けるためだと考えられる。

 私の恩師で、日本・北朝鮮を専門とする地域研究家である英ウォーリック大学のクリストファー・ヒューズ教授は、「極東・シベリアがいずれ中国の影響下に入ってしまうのではないか」という懸念をロシアが持っていることを指摘していた(第84回)。

 ロシアは極東開発に関して、中国とのシベリア・パイプラインによる天然ガス輸出の契約を結び、関係を深めてきた。

 しかし、それはロシアにとって「もろ刃の剣」である。シベリアは豊富なエネルギー資源を有する一方で、産業が発達しておらず、なにより人口が少ない。

 そこへ、中国から政府高官・役人・工業の技術者だけでなく、掃除人のような単純労働者までが「人海戦術」のような形で入ってくるとどうなるか。この状況が続けば、シベリアは「チャイナタウン化」し、中国に「実効支配」されてしまうだろう。