筆者は35年前に
小学生の諏訪さんと会っていた!

 諏訪さんが宇宙飛行士という職業に関心を持ったのは小学5年生の時。「アポロ17号のユージン・サーナン飛行士に会ったこと」と会見で語っている。実はこの貴重な場に、筆者は同席していた!

 1988年春、(財)日本宇宙少年団と学研が主催した、米国の宇宙施設を回るツアーに諏訪さんが参加。ツアーの目玉がサーナン飛行士訪問だった(筆者は当時、日本宇宙少年団に勤務し同行していた)。サーナン飛行士は、小学生と車座になって床に座り、熱く語りかけた。その一言一言に、諏訪さんらは真剣に耳を傾けた。「目の前のこの人は、月に行ったことがあるんだ」。諏訪さんは当時の感動をそう話す。

 諏訪さんはご自身の強みとして「長期間にわたって、諦めない粘り強さ」を挙げている。少年の頃の夢を抱き続け、数十年後ついに夢をかなえた事実に胸が震えた。

JAXA「初の学歴不問」宇宙飛行士試験で、意外な“真の課題”が不合格者の声で露呈 宇宙飛行士候補者選抜試験を突破した、米田あゆさん(=中央)と諏訪理さん(=右)。諏訪さんはオンラインで会見に参加した Photo:JIJI

学歴不問の効果はあったのか?
JAXA理事に直撃した答え

 さて、学歴不問で門戸を広げたが、結果的に選ばれたのは「東大卒のスーパーエリートだった」と思う人も多いかもしれない。筆者も、会見後の囲み取材でこの点をJAXA佐々木宏理事に尋ねた。

 すると、「本当に学歴を気にせずに選考した結果。健康でプレゼンテーション能力も高く、操作能力などを含めた総合的な判断の結果として選んだのが、この2人だった」という。

 学歴不問、文系OKの効果は?JAXAによると、応募者の約2割は理系出身でない人だった。最終選抜に残ったファイナリスト10人の中にも文系出身が1人いたという。

 10人の職業は自然科学系が4人、それ以外が6人(諏訪さんは自然科学系以外に入る)。具体的にはエンジニア、営業職、コンサルタント、アナウンサーなど。大学を卒業していない人はいなかったらしいが、家庭の事情で進学できなかった人にも門戸を広げたという点で、「学歴不問」は評価できる。

 そして、諏訪さんの年齢が史上最年長の46歳という点も注目に値する。佐々木理事は「年齢が評価のポイントではない。中年になると検査でよくない数値が出てきがちだが、諏訪さんは医学的に健康だった」と語る。年齢にとらわれる必要はないという点で、勇気づけられた人も多いはずだ。

 今後、JAXAは約5年ごとに宇宙飛行士選抜を行っていく計画だという。学歴不問、文系OKの方針を継続するとみられ、応募者も増えそうだが、ここで問われるのが不合格者へのフィードバックの在り方だ。

 海外に目を向けると、NASA(米航空宇宙局)は何度も選抜試験に挑戦した人を評価するといわれる。

 2012年のNASA宇宙飛行士選抜で応募者約6300人からトップ100人のセミファイナリストに残った元NASAの研究者・中村圭子さんによれば、「NASAでは不合格者(の希望者)に対して、なぜ自分が落ちたのか、次の試験までにどういうスキルをアップすればいいかフィードバックを受けられる」という。