他社サービスとは異なる
京阪電鉄のプレミアムカー
そんな中、中期経営計画でうたわれたのが「プレミアムカー」の拡大だ。これは京阪が2017年8月に導入した座席指定特別車両で、特急型車両である「3000系」「8000系」に1両(6号車)を連結している。
近年、関東大手私鉄がこぞって導入している座席指定列車の多くは、列車全てが指定席のライナー方式で運行されているが、プレミアムカーはJR東日本の普通列車グリーン車や東急大井町線の「Qシート」のように、乗車券だけで利用できる列車の一部が特別車両の併結方式だ。
2018年、2021年と段階的に拡大し、現在はおおむね1時間あたり6本前後。15分間隔の特急を中心に運行しているが、これが好評なので2025年度に「3000系」車両にプレミアムカーを増結するという。
京阪はホーム長の制約で最大8両編成なので「3000系」は普通車を1両減らし、普通車6両、プレミアムカー2両の構成となる。なお「8000系」は増結しないため、プレミアムカーが1両の列車と2両の列車が混在することになるが、「3000系」を利用の多い時間帯に集中的に運用する形になるのだろう。
そんなプレミアムカーだが、運行開始からほどなくしてコロナ禍が訪れたため、まだ乗っていないという人は多いかもしれない。上記の説明文だけでは近年はやりの座席指定列車の一種と思うかもしれないが、他社のサービスと異なるのは、その名の通りのプレミアム感だ。
東武や西武、京王などが運行するロングシート、クロスシート転換型の座席指定列車は、2席+2席の配置で、座席にリクライニング機能がない車両も多い。通勤電車としても使用するため内装は普通車と変わらず、特別感はない。指定席で確実に座って帰れることだけに価値を見出す列車だ。
一方、プレミアムカーは入り口の扉からして金色だ。大型荷物棚を備えたデッキと客室はガラスのパーティションで区切られ、車内は漆黒と素材色に金色をアクセントとして取り入れた落ち着きのある空間となっている。座席は1席+2席のゆとりのある配置で、リクライニング機能はもちろん、厚みのあるクッション性の高いシートだ。また大型ヘッドレストを備えることで、パーソナル感を高めている。
これでいて、プレミアムカー券は淀屋橋駅起点で樟葉駅まで400円、京都府内に入ると500円。出町柳駅起点では香里園駅まで400円、寝屋川市駅以遠は500円だ。JR東日本のグリーン車が自由席ながら平日50キロ(京阪で言えば淀屋橋駅~三条駅間に相当)まで780円、東急「Qシート」が500円、西武「S-Train」が地下鉄有楽町線からの通し利用で510円、座席転換型の東武「TJライナー」が下り370円であることを踏まえると、非常に割安なサービスと言える。