プレミアムカーの成功で
他社にも追随の動き

 さて、そんなプレミアムカーは京阪の経営にどの程度寄与しているのだろうか。運行本数は大阪方面が平日85本、土休日88本、京都方面は平日88本、土休日91本。平日245日、土休日120日、乗車率75%とすると、年間約9.6億円の収入となる。

 導入時の発表によれば「8000系」車両10編成の設備投資額は16億円、「3000系」車両6編成では約12億円、合計28億円の投資だ。車内清掃や車両整備費用は通常車両と同等、車内検札や観光案内などを担当するアテンダントの人件費を、ざっくりだが1日あたり12編成に乗務して日給2万円と仮定すると約1億円で、8億円以上の利益が出る。4年で投資額を回収できる計算だ。

 今回、追加導入される「3000系」プレミアムカー6両も同様に約12億円。乗車率も同様に終日で75%とすると約3.2億円の増収だから、やはり4~5年もあれば回収可能だ。プレミアム感を演出する列車だけに陳腐化する前にリニューアルが必要だが、10年おきに工事するとしても十分お釣りがくる。

 プレミアムカーにはトイレがないが、トイレの設置には車両基地に汚物処理設備を整備する必要があり、イニシャルコスト、ランニングコストはバカにならない。長くても1時間程度の利用と割り切り、トイレを設置しなかった点も利益率に寄与しているだろう。

 こうなるとJR西日本と阪急もプレミアムカーの成功を座視しているわけにはいかない。JR西日本は2019年3月、JR神戸線・JR京都線・琵琶湖線を走る新快速に特別車両を連結して座席指定席サービス「Aシート」(当初は定員制、2022年3月から全車座席指定制)を提供しているが、2編成のみの連結で1日あたり2往復の「試行」であった。

「Aシート」車両は既存車両の中間ドアをふさいだ急ごしらえの改造車だったが、好評を受けて今年3月のダイヤ改正で2両を新造し、1日6往復に増便された。JR西日本は具体的には未定だが、今後も増やしていきたいと話す。