新規事業開発においては、「誰も考えたことがない」ということが大きな意味を持ちます。しかし、それは同時に、そこで生み出されるものがもたらす倫理的な問題も「誰も考えたことがない」ことを意味します。ChatGPTがもたらした「技術をどのように進化させるか」という問いを、イノベーションを創出する場ではどのように捉えるべきでしょうか。子育てをモチーフに考えてみます。
人々を分断するテクノロジーの進化についての議論
今回は「倫理」について考えてみます。
「意味のイノベーション」と「問題解決(あるいは改善)型のイノベーション」を比較すると、前者の方が倫理的な問題に直面することになります。なぜなら、意味のイノベーションは目的地を大きく変えることなので、倫理的検討が未開拓のエリアが広いからです。人が考えたこともない地平に踏み出すのであれば、当然です。
倫理というと身構えてしまうかもしれません。皆さんがよく目にする話題から考えてみたいと思います。
昨年11月にリリースされた対話型AI「ChatGPT」は、わずか2カ月で1億のユーザー数に到達したそうです。そこで今、さまざまな意見が飛び交っています。
どんな質問にも素早く答えてくれる「相棒」の出現に、とても優秀なブレーンストーミング相手であると称賛が広がる一方で、情報としてまったく的外れな回答に、「うそつき」と呼ぶ人たちが出てきました。
すると今度は、うそつき呼ばわりする人を「新しいアプリケーションの特質がまだよく分かっていない愚かな人」と評する人も出てきます。こうしたアプリケーションの進化は速く、今日の問題は明日の問題ではないと論陣を張るのです。