「自己肯定感」という言葉が世の中に広まり、それを高めることが大事だなどと言われるため、「自分は自己肯定感が低い」と悩む人が非常に多い。そんな人たちをターゲットにして、自己肯定感を高めるための処方せんが出回るようになった。しかし、そのようなものに安易に頼ると、見せかけの自己肯定感は高まっても、成長が止まってしまう恐れがある。今回は、自己肯定感と成長の関係について解き明かしてみたい。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
自己肯定感を
無理に高めることの落とし穴
いつの間にか自己肯定感という言葉が世の中に広まり、教育界でも子どもや若者の自己肯定感を高めることが大切だと言われるようになり、ほめることで自己肯定感を高めようという風潮が強まってきた。
しかし、こうした空気の中で自己肯定感を高めようとほめて育てられてきた今の若者たちは、どっしりとした安定感を持つ、自己肯定感の高い人になっているだろうか。実際には、むしろ傷つきやすく、すぐに落ち込んだりキレたりしやすい、心のもろい人が増えているのではないだろうか。
大人になり、社会に出て働くようになっても変わらない。仕事の場を思い返してみても、ちょっと注意しただけでひどく落ち込んだり、強く反発したりする新入社員に手を焼く人たちが非常に多い。
なぜそんなことになるのかといえば、自己肯定感というのは、もがき苦しみ頑張った結果として高まるものであり、ほめられるなどの形で無理やり高めるものではないからである。自己肯定感の高さというのは、目的ではなく、あくまでも結果なのだ。