景気回復には
時間がかかる

 IMFは、韓国の今年の経済成長の見通しを昨年4月の2.9%から4回連続で引き下げ、さらに今年4月には1.5%にまで下げた。今年に成長率見通しを引き下げた国は他に日本やドイツもあるが、主要20カ国(G20)のうち経済成長率が連続して下落したのは韓国だけである。

 輸出依存度が高い韓国は、世界景気の影響を大きく受ける。景気鈍化で韓国の主要輸出品目である半導体などの製造業関連需要が急減した。韓国の生産の10%、輸出の20%を占める半導体の景気が酷寒期を迎える中、サムスン電子の1~3月期の営業利益は前年同期比96%減の6000億ウォン(約600億円)となった。

 中国が新型コロナに伴い経済封鎖したことの影響もあった。中国は防疫を緩和し、「リオープニング」したというが、これによる輸出回復は期待ほどではない。

 韓国国内では「今年上半期の景気は厳しいが、下半期には回復する」との期待が高かった。しかし、足元では下半期の回復は難しいという懸念が出ている。また、IMFが景気見通しを引き下げたのは、韓国の景気回復が予想より遅れるという見通しのためとの分析も出ている。

 いずれにせよ、物価上昇と高金利は、家計支出も含め、内需を制約する要因となっている。

金利上昇による可処分所得減少で
景気がさらに縮小する可能性

 IMFによる韓国経済に関する懸念の一つは、前述の通り、家計債務脆弱国であることであり、家計の負債が多いために消費が抑制され、その悪影響が経済全体に波及することである。

 その根拠となっているのが家計部門の総負債償還比率(DSR)の高さだ。DSRとは家計が一定期間に返さなければならない貸付元利金の所得に占める割合である。韓国のDSRは昨年4~6月期に13.4%を記録した。つまり、韓国の家計は稼ぎの13%以上を負債と利子の返済に使ったという意味である。ちなみに日本や米国は6~7%にすぎない。

 2007年に665兆ウォン(約67兆9300億円)だった家計負債は昨年末には1867兆ウォン(約190兆7200億円)にまで膨れ上がった。金利上昇による可処分所得の減少で、景気がさらに後退するリスクがあるとの指摘も出ている。