感覚ということは、本書を読み終えてすぐに身についているものではありません。普段から少しずつ何かを継続し、習慣化し、定着させ、身体に覚えさせることが必要になります。そのための具体的な手段が、先ほどの「STEP1」から始まる手順で図解することなのです。
もちろんここであなたは「普段、人と話をしなければならない場面で、いちいち事前にそんなことできない」とツッコミを入れたい気持ちになるはずです。その通りだと思います。だからいきなり本番でそれをやろうとするのではなく、それが可能な状況において少しずつ練習をしてみて欲しいのです。
例えばあなたが明日、人前でスピーチをするとします。本番では難しくても、前日の準備段階では可能ではないでしょうか。あるいはテレビでニュース番組を観ているときに「政治と宗教」という話題が取り上げられていたとしたら、そのテーマにおけるあなたの主張を家族や友人にどう説明するかを考えてみてはどうでしょうか。そしてそれを考える際にただ漠然と考えるのではなく、紙とペンを使いながらその説明内容を図解してみるのです。
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深沢真太郎 著
もしスムーズに「塊」と「矢印」で表現できるのであれば、おそらくその話はとてもわかりやすく相手に伝わるでしょう。一方で、もしスムーズに図解できないとするなら、もしかしたらあなたは「政治と宗教」というテーマにおける持論がまとまっていないか、そもそもそのテーマに対する理解が足りないのかもしれません。その状態のままなんとなく相手に話をしても、単に伝わらない話になってしまう可能性が高いでしょう。
このようなことを日々のちょっとした場面に動作として取り入れることによって、あなたの身体が(頭脳が)物事を「塊」と「矢印」で表現することに慣れてきます。それはつまり因数分解することに慣れてくることと同義です。あなたのコミュニケーション能力はもちろん、思考力もまとめて鍛えることができる一石二鳥の習慣です。ぜひ取り入れてみてください。