賃貸物件に住み続ける限り
何十年も家賃が発生する
分譲マンションに賃貸で住むと、その年間家賃の25~33倍が分譲価格に相当する。つまり、同じ物件を購入して住宅ローンを支払うなら、金利などを含めて35年程度で完済すれば、その後の支払いがなくなる。
これに対して、賃貸は住んでいる限り家賃が発生する。もし30歳で結婚して90歳まで生きるなら、60年間も家賃の支払いが続く。35年と60年ではどう計算しても、賃貸の方が生涯住居費は高くなる。単純に言うと、賃貸だと大損をしかねない。
冒頭で述べた「住宅・土地統計調査」では、80歳以上の持ち家率は80%を超えている(18年時点)。この数字は、損得勘定の表れでもあるのだ。
国や金融機関も、誰もが物件を買えるように仕組みを整えてきた。その最たるものが住宅ローンだ。
以前は35年の固定金利が当たり前だったが、昨今は金利を低く抑えられる変動金利が普及した。金融機関が競い合う際に、金利の低さは大きな差別化要因になる。
このため金利競争が起き、今では、金融機関によっては0.3%ほどの金利で借りられるようになった。一般消費者がこれほどの低金利で多額の“借金”ができるのは住宅ローンだけといっても過言ではない。
住宅ローンを借りると漏れなく付いてくるものに、生命保険がある。もし世帯の大黒柱が亡くなり、住宅ローンを支払えなくなった場合、残された家族が家の売却を余儀なくされるようでは悲劇である。
そうしたケースを防ぐため、ローンの借主を団体信用保険(以降、団信)という生命保険に強制加入させて、本人が死亡した際などに債務を全額免除する仕組みが存在する。
つまり、遺族は負担なしに同じ家に一生住み続けることができる。この団信は、最近では「がん保険」や「7大疾病保険」のように、生命保険色が濃くなってきている。ローンの借り主が特定の病気になった場合、住宅ローンの残額が減る仕組みである。
こうした仕組みが整備された状況下で持ち家を取得することは、家族が一生住める家を用意することに他ならないのだ。