ロシアのけん制にひるむことなく
ウクライナへの弾薬供給を検討

 尹錫悦大統領は、前述のロイター通信とのインタビューで「ウクライナが大規模な民間人攻撃を受ける場合、人道的、経済的支援を越えて、ウクライナに対する支援を拡大する可能性がある」と述べた。

 韓国の国防省は20日、機関銃や戦車砲に使う弾をポーランドに輸出すると明らかにした。これは隣国ウクライナを支援しながら防衛力の強化に取り組むポーランドと防衛協力を深めることが目的である。大統領室高官はウクライナへの直接の軍事支援は、「今後のロシアの行動次第」だと述べた。

 これまで韓国は、北朝鮮を支援するロシアとの対立を避けるため、ウクライナへの直接の軍事支援を控えてきた。

 米国は韓国に対し、ウクライナへの砲弾の販売を要請していたようである。今回の尹錫悦大統領のウクライナ支援発言は民間人殺傷などの条件を付けたものだが、「殺傷武器の支援は不可」という韓国政府の立場変更の可能性に言及したものとして注目される。

 ロシア外務省は尹錫悦の発言に対し「ウクライナに対するいかなる武器提供も反ロシア敵対行為とみなす」と明らかにし、ウクライナに武器支援が行われたときは、その代償として北朝鮮にロシア製武器を供給すると威嚇する発言を続けた。

 しかし、ロシアはすでに北朝鮮に対し軍事技術などの支援を行っている。北朝鮮が発射した固体燃料型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」開発にはロシアの技術を導入した疑いがある。火星18は3段固定燃料推進ミサイルでロシアのICBMに似ているという。

 韓国がロシアの脅しにもひるむことなく、ウクライナを支援する米欧と協力していく姿勢を示したことは、民主主義国家と権威主義国家との陣営対立の中に身を置くことを決意したものである。その結果、北朝鮮と対立する韓国への米欧の支援が強まることだろう。