2021年と2001年の出生数と増減率AERA 2023年4月24日号より
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 育児休業の充実にしろ、保育園の増設にしろ、対象となるのは原則「正規雇用同士の共働き夫婦」だ。しかし、その割合は全体の4分の1に過ぎない。残り4分の1は「未婚者」で、残る2分の1は地方に多い「正規雇用の夫+非正規やフリーランスの妻」の組み合わせ。こうした未婚者や非正規の人たちへの支援は、30年間ほとんどなされてこなかったという。

「その結果、正規雇用の共働き夫婦が比較的多い東京の出生数は20年前とほぼ変わりなく、年10万人前後で推移しています。一方、例えば秋田県は2001年には約9千人の子どもが生まれましたが、21年は約4300人まで減っています。つまり、これまでの国の少子化対策は、東京しか見てこなかったのです」(山田さん)

 都道府県別の21年と01年の出生数と増減率を見ると、減少幅は東京がマイナス3.1%と断トツに低く、秋田は全国で最も多いマイナス51%だ。

 こうしている間も、人口減少の時計の針は止まらない。突破口はあるのか。

 3月末、岸田政権は、「異次元」と掲げた少子化対策のタタキ台を公表した。30年代に入るまでの7年間を、少子化傾向を反転させる「ラストチャンス」と位置づけ、今後3年間を「集中取り組み期間」と掲げ、児童手当や育児休業の拡充、男性育休の推進などさまざまなメニューを盛り込んだ。

 この「異次元の少子化対策」について前出の山田さんは、

「これまでの政策の延長線上に過ぎず、一番肝心の結婚と高等教育の支援がほとんどない」

 と批判し、こう続ける。

厚生労働省の「人口動態統計」からAERA 2023年4月24日号より
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「今の若者は一律に捉えることはできなくなっています。それが少子化対策を難しくしている一つの要因でもありますが、どれか一つで子どもが増える魔法のような対策はありません」

 そのためには例えば、正社員の共働き夫婦には長時間労働の削減を。非正規雇用者や専業主婦などにはリスキリング(学び直し)を。未婚者には、結婚して親元を離れても生活水準が下がらない支援が必要だという。

「それぞれの立場に合わせた施策を全て行うことが必要です。そうでなければ、これまでの施策の延長に過ぎず、少子化は解決しません」(山田さん)

(編集部・野村昌二)

AERA 2023年4月24日号より抜粋

AERA dot.より転載