「なぜ?」と質問するのをやめる

 では、成果の出るパターンに変えるためにはどうすればいいのか。良い方向に変えていくために大切なのは「適切な質問」でみんなの視点を変えることです。質問は、相手の思考パターンを変える大きな力があります。

 質問には大きく分けて、過去視点と未来視点があります。まず過去視点の質問とは、

「なんでこのクレームが発生したんだ?」
「どうして今月の売上が悪いんだ?」

 起きてしまった過去について、あれこれ問いただす質問が過去視点の質問です。

 このように「なぜ?」と過去視点で質問をすると、

「お客様の誤解で……」
「他部署の納品ミスで……」
「物価高で景気が悪くて……」
「業界全体が下がり調子で……」

 といった言い訳じみた反応となります。しかし、上司がダメな理由を質問しているわけですから、返答としては正当な側面もあります。

 しかし、「なぜ?」の質問を繰り返していくと、部下も責任追及をされていると感じ、無意識に防衛本能が発動したり、自尊心を傷つけられることもあります。一般的に「すべて私が悪いです」と認めて評価を下げたい部下はいないので、「周りの環境のせいであり、自分は悪くない」と被害者になることで逃れようとすることでしょう。そんな姿勢を見て、上司はさらに怒るという、成果の出ない悪循環パターンに無駄な時間をかけているチームが非常に多いのです。ダメな理由を導き出す分析そのものに価値はありません。本来、分析をする意味は、より良い対策を打つため、つまり「未来に向けての解決策」を話し合うためです。

 僕のミーティングでは、原則として過去視点の質問や話をしません。適切に事実だけ見極める分析は難易度が高く、詰問(相手を責める質問)になりがちだからです。ミーティングをやる目的は、部下のモチベーションを下げることでも、犯人探しをして誰かを吊るし上げることでも、責任のなすり付け合いをして最悪のチームを作ることでもありません。忙しい中、わざわざ集まる目的はただ1つ、コレです。

 過去にとらわれず、周りのせいにせず、自らの考動で希望ある未来を創造する